もぎたて☆フレッシュ！　～どんぐり農園の愉快な果物狩り～｜リアクション

もぎたて☆フレッシュ！　～どんぐり農園の愉快な果物狩り～

　六月一日宮檸檬は振り返る。
　自分を呼ぶ声に、聞き覚えがあった。
　花厳望春。彼の友人である。女子力の高さと慎重さは一目置くところである。

「何とか早く、この状況から脱出したいんだけど……」そう語る望春は、檸檬のいでたちを見る。
　檸檬はノリノリでガッツポーズをとる。
「レモンの美味さを存分に広めるチャンスだ。リンゴやミカンなんかより旨いって、教えてやる！」

　そういう檸檬はなぜか、パステルカラーの魔法少女の格好。
　上背はあまりないが、華奢で痩躯の彼、野性的だが端正な顔立ちと相まって、魔法少女の服装も似合ってた。
　似合っていて嫌、というやつだ。

　肩にレモン、ステッキの先にもレモン。

「まあ、なんていうか……頑張れ」
「哀れみの目で慰めるなよ。ところで、望春は……？」

　まあ、ちょっとした奇跡だねと笑いながら、望春は指先を見せる。
　姉からしょっちゅうつっつかれる苦労人の彼、この状況でもかなりの困難を背負わされていた。
「早く帰りたい……」しみじみ呟く。

　しげしげと見つめたあと、檸檬はあることに思い至る。
「そう。こんなマイナーフルーツ、どうやっても食べてもらえない。普通ならね」
　望春は、檸檬をまっすぐ見る。

「でも、レモン推しの檸檬くんと協力しあえれば……」
　望春の意図を察し、檸檬も笑う。

　生のままだと酸っぱいレモン。
　だが、彼の果物を使えば……。
「美味いにきまってるんじゃ……」

　その時、彼方から地雷のような音がとどろいた！

「いっただきまーす！」
「うわっ！」

　突進してきた羽生碧南に弾き飛ばされる檸檬と望春。
　続く雅人と空音のラッシュ、颶風のごとき奔走に巻き込まれる。

　なんたる悲劇！　互いを補い合う最強のタッグは、こうして引き裂かれたのだ！
　別れ別れのコンビ、再会の時はあるのか。