【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～白猫組サイド｜リアクション

【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～白猫組サイド

「強風なんて、関係ない！」
　尾鎌蛇那伊は黒の旗をなびかせ、一歩一歩力強く大地を踏みしめていく。地響きが聞こえてきそうな迫力だった。地面よ割れよとばかりに踏み込み、加速の度合いを強めていった。
「空気抵抗の壁も、正面突破でぶち破ってあげるわ！」

　先をゆく白猫組、呉井陽太。一瞬風にあおられてよろめいたが、なんとか立て直した。額にかかる汗にも構わず、風の勢いが弱まったタイミングを見計らって再度駆け出す。また思わぬ方向から風が吹いてくるかもしれない。旗が絡まったり地面についたりしないよう気をつけながら、風にも注意を向ける。
（オレは白猫組の皆の気持ちを背負って走ってる）
　陽太は少しずつ距離を縮めてきた黒猫組走者の様子を伺った。
（向こうも同じこと。なら、お互い悔いのない勝負をしよう！）

　観客の声援が最高潮に達した。
「とらえたわ！」
　グラウンドに差し掛かる直前で、蛇那伊がついに陽太と並んだのだ。
「負けないぞ！」
　陽太の方も、再度リードを奪おうと気迫を見せる。白猫組と黒猫組、両者は併走したまま、ついにグラウンドに入った。

「頑張れー！」
　走り終えた区間１～４の走者たちも、グラウンドに到着して声援を送っている。
「どうぞ、皆さん飲んで下さい」
　御鏡聖は用意した飲み物をチアリーディング参加者に配り始めた。
「私も長い神楽舞などを踊るときは砂糖を食べます。チアは激しい動きをするようですし、本番前に体力をつけておいた方が良さそうです。糖分たっぷりのスポーツドリンクを用意しました」
「ありがとう、聖ちゃん！チアのために体力を回復したいからね！」
　雨寺凛はお礼を言ってスポーツドリンクを受け取った。
「これで、最後まで踊りきれると思います」
　隣では、薄野五月がレースの行方を見守っている。
「できればゴールの瞬間も見たいと思っていたので、嬉しいです！」
「ブランシェさんは大丈夫ですか？」
　走り終えたばかりでまだ呼吸を整えている常闇月は、一緒に走ったエヴァ・ブランシェを気遣った。エヴァは快活に答える。
「大丈夫よ。チアを最後まで踊りきるために、体力をつける特訓もしたもの！」

　ゴール地点まで残り20メートルほど。両軍譲らない構えだったが、ついに動きが見えた。蛇那伊が上体を前に傾け、最後の攻勢に出たのだ。一気に前に躍り出る巨体。
「くっ……」
　陽太も足の痛みを忘れて追いすがろうとするが、もう爆発力は残っていない。
　歓声に迎えられながら、蛇那伊はゴールのラインを駆け抜けた。並走の鬼熊先生のホイッスルが鳴る。２，３秒ほど遅れて、陽太がゴール。白と黒の応援旗は、それぞれ浅井先生と鬼熊先生に渡された。
「リレーは終了！勝者の黒猫組には200点を与える！対する白猫組は、一回旗が地面に着いているため50点を減点し、無得点！」
　鬼熊先生のアナウンスに、黒猫側の観衆が沸いた。
　
　体力を使い切って倒れこむ陽太。地面に手を付いた彼にすぐ駆け寄って、手を差し延べる者がいた。
「最高の勝負ができたわ。ありがとうね」
「ああ、こちらこそ、ありがとう」
　陽太と蛇那伊は、固く握手してお互いの健闘をたたえるのだった。