【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～白猫組サイド｜リアクション

【体育祭】フリーダム！ネココー流応援合戦～白猫組サイド

「いよいよデスね……」
　リーダーのマリナが、裏方の呉井陽太に合図を出した。陽太が音響機材のスイッチを入れると、アップテンポのリズミカルな音楽が流れてくる。皆が知っている去年のヒットチャートだ。離れたところで音量を確認した御鏡聖はOKのサインを出す。
「皆さん、頑張りましょう！」
　気持ちの高ぶってきたロベルトが、皆を鼓舞した。
「さて、淑女諸君。戦闘開始よ！全力で力を出し切るわよ！」
　皆の緊張をほぐしたいエヴァの言葉に、皆が「おー！」と唱和する。
「Let’s goデス！」
　マリナの号令一下、11人の白猫たちはグラウンドに繰り出した。

　最初は、全員で動きを揃えてダンスをする。振り付けは皆で案を出し合い、練習を通して修正しながら完成させた。基本は猫をイメージした可愛い動きだが、応援らしい力強さも意識した。
　優菜は、橙色のポンポンを振って一生懸命に動きを合わせた。拍を数えながら、ずれないように。社交ダンスとは違う激しい動きに、息が上がりそうになる。
「動きを合わせて、頑張りますっ！」
　でも、必死に踊っていると自然に楽しくなってくる。この日のために、衣装も張り切って作ったのだ。仲間と一緒に、最高のパフォーマンスができる。乱れた息も、心地よかった。

　身長が低いので前列に配置されたみゆき。周りとの身長差をカバーするかのように、ジャンプする場面は思い切り地面を蹴った。続いて、軽く腰を振りながら一回転。尻尾の先につけた一人一人違う色が映えた。
　本番の一ヶ月ほど前からスタートした合同練習。皆と息を合わせるのは予想以上に難しかったけれど、自分でも放課後で自主練して間に合わせてきた。諦めずに頑張って、本当に良かった―――

　右手にポンポン、左手には猫パペットのハルくんという格好で、夏朝も精一杯に踊る。ハルくんもお手製のチア衣装でおめかししている。要所で、ハルくんに喋らせる。
「白猫頑張れ、頑張れにゃー！」
　ハルくんになりきる夏朝の笑顔がはじける。
「あっ！」
　ところが、手を振りあげたはずみで、ハルくんは真上に飛んでしまう。が、落下してきたところをとっさにキャッチ！再び装着して一声あげる。
「にゃー！」
　演技中だが、ちょっと拍手が起きた。

　さて、その頃観客席では。
　白猫組のギャラリーに愛想を振りまいていた7色衣装のキグルミ（旅鴉月詠が、実は中に入っている）は、チアの音楽開始とともにそっと舞台へと向かった。
「……何だ？」
　不思議そうな表情の周囲にも構わず、舞台の端の方でキグルミは音楽に合わせて動き出す。ダンスの見様見真似で動いているらしい。だが、ワンテンポ遅れたり、一人だけ逆方向を向いたり。近くの人から笑い声が漏れた。
（……作戦通り）
　そう、振り付けを知らないわけではなく、月詠の計算だった。キグルミの動きは、だんだん洗練されてきて、やがて自然にチアに混じってしまった。パフォーマンス中の飛び入りは得点に加算されないが、別にかまわない。踊っているチアリーダーたちも、すぐに慣れて受け入れた。不思議なキグルミでも、同じ白猫組の仲間なのだから。