焼きそばパンＤＸをこの手に！｜リアクション

焼きそばパンＤＸをこの手に！

「そう、私たち購買利用者は知っている」
　はっと振り向くと、いつからそこにいたのか、圭花が壁に凭れてこちらを見ていた。
「あれを手にできるのは、傷つきながら学んだものだけ。
　あれを手にすることは、勝者の証。
　たぶん私たちのみんな、一度ならず購買で敗北を喫した陽があった。
　売れ残りのバターロールやジャムパンを、涙で湿らせた日もあった。
　でも……だからこそ、今、焼きそばパンに手が届く」

（ああ……）

　もなかは、胸の内でなにかが疼くのを感じる。
　圭花は、何かすごく大切なことを言っている気がする。
　単に思わせぶりなことを言って、遊んでいるだけのような気もする。
　何かに指がかかりそうで、もなかは立ち尽くす。
　
　その有様を、不敵な笑みで見る執。

　あんまり洗剤とかと関係ないところで転倒し、遊具にぶつかって目を回してしまった璃亜さん。不幸。
　さらに洗剤葛湯に頭から突っ込んでいき、泡と葛湯塗れになる。

　儚げな面影に一筋、長い黒髪がかかる。悪夢の人形劇に出る、少女の人形。昏い隠花植物。
唇から洩れる吐息は切なく、苦しそうで、柔らかく隆起する喉仏には虹色のシャボンが、まるで蛞蝓の這ったあとのように生々しい跡をのこし、さらに下れば外れてしまった胸元のボタンに覗く陶器のように白い肌、その下には、濃い陰影。

　あんまり調子に乗ってると、らっかみ倫理委員会に怒られる。急いで場面転換である。