寝子中同窓会！｜リアクション

寝子中同窓会！

○同窓会の終わり

　綾辻綾花は、卒業する前から志村先生の定年の事は聞いていました。
　とてもお世話になった先生なので、もちろん出席の返事を出し。
　ちょっとおめかしして、同窓会にやってきました。
「志村先生に会うのは半年ぶりぐらいですけど、懐かしい気持ちになります。高校で色んな事があってもっと前の様な感覚がするので」
　背の高い美人が先生にプレゼントを渡したあと、綾花は近づいていきました。
　
「志村先生、お疲れ様です」
　花束を渡しながら綾花はちょっとうるっとなりました。
「綾花か。ありがとう。おいおい、泣くなよ」
「ごめんなさい、３年間の出来事が思い出されてきて。卒業式では泣いてた私に優しく声かけてくれて更に泣いちゃったのを憶えてます」
　同じように寝子高に行く人ばかりではなく、寂しかったのです。
「綾花は図書委員で頑張っていたんだよな」
「はい、志村先生にはとてもお世話になりました。中学一年の時、図書委員の仕事で貸出や返却の対応に慣れなくて緊張してた時はお話してリラックスさせてもらいました。本を丁寧に扱ってると褒めてもらえた時は嬉しかったです」
「綾花は頑張っていたからな。寝子高でも元気にしてるかい」
「はい、高校でも図書委員をしています。中学での経験が役に立っていると思います。あの……」
　綾花は思い切って気になっていたことを聞いてみました。
「先生はこれからどうされるんですか？　またお会いできたら嬉しいですけど……」
「ああ、これはまだはっきり決まったわけじゃないから人に言えないんだが」
　言えないと言いつつ、先生は同窓生たちから注がれたお酒でほろ酔いになっているようでした。
　少し姿勢を低くして小声で話します。
「実は寝子高から声をかけてもらっているんだよ。来年度と言わず、産休に入る先生の代わりに来学期から来てくれないかと言われて迷っているところなんだ」
「そうなんですか！　先生とまたお会いできたら嬉しいです」
「人間到る処青山あり、だな。だが、くれぐれもまだ内緒にしておいてくれよ」　
「はい、誰にも言いません」
　弾みそうになる声を、綾花は努めて抑えるのでした。

　　　　　　　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　☆　　　　　　　　　☆　　

　楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、同窓会はお開きとなりました。
　綾花はそのまま帰らず、校内を散策してみることにしました。

　図書室に行き、書架を見ていました。
　つい前のように本の整理をしてしまいそうです。
　ふと気づくと、同じように書架を見ている先客がいました。
　灰色の髪をおだんごに結ったその女性は、綾花より少し年上に見えました。
「懐かしいですね」
　声をかけると、その女性――坂内梨香は答えました。
「そうね。あなたも卒業生？」
「はい……配置が変わってなくて安心しました。半年前ですけど」　
　好きで何度も読んでた小説を見つけて手に取りながら、綾花は答えました。
「私は三年前くらいね」
「先輩も本がお好きなんですね」　
「ええ……」　
　そのまま二人は、しばし図書室に佇んでいたのでした。

　
　思い出は、人の数だけある宝物。
　嬉しい思い出も、悲しい思い出も、いつかあなたに力をくれるのかもしれません。

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あとがき

担当マスター：茄子りんこ
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ご参加ありがとうございました。
参加キャラクターの人数的に少々寂しい同窓会になってしまいましたが、全体的には盛況だったとお考えください。
参加者以外の高校生や中学生にも関係のある要素がちょっと入っていたりしますので、よろしかったらぜひチェックしてみてください。

日々進歩を求められる世の中ですが、たまには立ち止まり過去を振り返ってみるのはどうでしょうか。
思い出が人を支えたり生き方の指針となる比重は、存外大きいのかもと気づくかもしれません。

それでは、またお会いしましょう。

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