【身体測定】変身？普通？身体測定｜リアクション

【身体測定】変身？普通？身体測定

◆準備はＯＫ！

　身体測定予備日。
　それは、メインの身体測定当日に欠席したり早退したりして、測定を受けられなかった生徒たちのためにある予備の日。
　だが、今年予備日の測定を受けることになった生徒たちは予定外の多さだった。

　身体測定の手伝いをする保健委員たちが集まったのはカフェテリア。
　何故カフェテリアで測定？
　それは、身体測定当日午前に起きた事件で保健室が破壊されてしまったからである……
　午後は体育館に場所を移して行われたが、これまたひと騒動起きていた。
　おかげで身体測定できなかった生徒が続出し、普通の教室では狭すぎるということでカフェテリアが使われることになったのだ。

　集まったのは保健委員ばかりではない。中には美化委員の森蓮の姿もあった。
「あら、手伝ってくれるの？」
　同じクラスの保健委員、尾鎌蛇那伊が問いかける。ちなみに口調は女性だが、蛇那伊は筋骨たくましい男性だ。
　蓮は答える。
「はい。今日は相撲部も吹奏楽部もお休みです。鷲尾先生には事前にお話しし、協力の許可をいただきました。猫鳴館の裏庭菜園で畑仕事をしているので、体力はあります」
　少しでも役に立てればと手伝いを申し出た蓮である。
「助かるわ。男手が足りなかったのよ。テーブルも移動させなきゃならないし」
　保健室教諭の鷲尾礼美の指示に従い、蛇那伊と蓮はテーブルを動かし、衝立を運び入れる。
「衝立が倒れないよう、重りとして植木鉢を持ってきましょうか」
「あら、いい考えね」
　蛇那伊が賛成し、蓮の提案は実行に移された。
　これで衝立は安定し、多少のことでは倒れなくなるだろう。
「今日は普通に、平穏にお手伝いできそうね。まっ、鷲尾先生のお胸に目が行っちゃってる人には耳を引っ張ったり、悪ふざけが過ぎる人には力技で強制退場とかはして貰いますけど」
　頼もしいクラスメイトの言葉に、蓮はにっこり微笑んだ。
　入口を入ってすぐの場所に、受付机と順番待ちの椅子が並んでいる広いスペースができた。
　まずは女子の測定なので、男子二人はそこで待機し、順番待ちの案内をする。

「ふにゅう～！　身体測定の日は色々とトラブル続きであまり鷲尾先生のお役に立てなかったですぅ～」
　鷲尾先生のそばに張り付いているのは添木牡丹。手の包帯や頬につけたガーゼは、身体測定の日のトラブルによる負傷だろうか。
「そんな事はないわ、よくやってくれてとても助かったわ」
「ええ～、そんな、私なんてぇ……！」
　鷲尾先生からお褒めの言葉をいただいた……と、牡丹はうっとりとした表情になり。
　一瞬のトリップからハッとして我に返り、あたりを見回した。
　誰も気にしている様子はなく、ほっとする。
（あまり喜びすぎて周りの人にドン引きされたら、私、恥ずかしくて保健委員の仕事できなくなりますもん）
「私……仕事だけは何でも出来ますから遠慮なく言ってくださいね」
（……人間不信だった私の存在を許してくれた鷲尾先生の為にも頑張らないとですぅ～）

「礼美先生、宜しくお願いします…」
　優しく微笑んで、御巫時子はてきぱきと視力検査表やメジャーを配置する。
　力仕事はできないけれど、細かい雑用も大事な仕事。
　準備もできたので、一番に測定をしてもらうことになった。
（背、伸びてるかな……）
「１５３ｃｍね」
　ほかの人から見ればまだまだ小柄な時子だけれど、それだけに１ｃｍ伸びたことがとても嬉しい。
　こんな成長の幸せを、他の皆さんも感じてくれたら。
　見ている私も幸せな気分になれそう……と時子は思った。

　二年の保健委員の長瀬志保は、部屋の角に座って身体測定票を受け取る。
　そこから衝立の内側の測定場所へ案内するのである。

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