木天蓼大学AO入試！｜リアクション

木天蓼大学AO入試！

●試験後

　こうして試験が終わり、受験生が帰路につく中、恵御納夏朝と日暮ねむるは大学側の好意で大学案内を受けることになった。ここで案内係に任命されたのが、北玄。名誉挽回のチャンスというところだろうか……。
　といっても結局城山水樹も一緒なのだが。
「ああ、監督してた人か」
　そうして施設を回っていると、四人は河島澪に出会う。受験生は受験終了後はすみやかに校外に出て下さい、と注意をすべきところなのだろうが、なんたって玄さんですから。
「せっかくなので一緒に案内するのですよ！」と澪の腕を引っ張っていくのだった。
　そんなわけでご一行。ぞろぞろと校内を歩いて回る。
「わ。……広い」
　夏朝はそのひとつひとつに感動して、頬をゆるめていた。
　寝子島高校もそれなりに大きな学校だが、やはり大学は置いてあるものも、大きさも種類が違った。研究室やら作業室やらわけがわからない場所も多々あるが、夢の詰まった空間であることはたしかである。
「大学で何を学びたいんだい？」
　ふと澪がそんなことを夏朝とねむるに尋ねた。玄や水樹ではなく彼女が、というところに余裕のようなものを感じ、大学側のふたりはニッと笑って会話に耳を傾ける。
「うーん、」
　ねむるはぼんやりと首を傾げる。まだわからないとも、話したくない取れる――曖昧なものだ。対して夏朝はスマートフォンを取り出して、木天蓼大学の有する学部を調べだした。
「……学部、色々あるね」
　夏朝は改めてこの大学の大きさを実感する。
「まぁ、そうね」
「僕も理工学部と医学部で勉強したのですよ！」
「……すごい」
　そして北玄という人の大きさも知った。
「僕が行くんだったら……芸術学部かな」
　彼女らしい、選択だろう。その場の全員がなるほどと納得しているような顔をする。
「行くなら何しようかな……」
　けれど彼女もまだ高校一年生。未来のことなんてまだまだわからない。
「あ！」
　そんなことよりも――
「木天蓼大学の猫さんだ！」
　小さな猫の方がよっぽど関心があるらしい。夏朝は嬉しそうに猫に駆け寄り、実は猫が好きな水樹もそのようすを見て微笑んでいる。そして玄は張り合うように猫とじゃれている。
　そんな彼らを見てねむるはほわ～っとあくびをして、澪は静かに空を見上げた。
「いい天気だな……」
　こんな日は身体を動かしたい。受験生であることを忘れそうなほど、穏やかな気持ちが澪の胸を占めていた。

　そして二週間後。澪の元に合否通知が届いた。
　澪はその結果に目を見張り、なんだか落ち着かないまま学校へ電話をかける。
　かけてから――ああ、今日、担任来てるんだっけ？　と首を傾げる。
　プルルル、プルルル、プルルルル。何度目かのコールの後、「はい～？」と電話口に出たのは澪が所属する射撃部の顧問・ウォルター・Bだった。
「あ、ウォルター先生ですか？」
「ん？　その声は河島かなぁ？」
「はい、実は――」
「おお～！　それはおめでとうございます～。担任の先生にも伝えておきますねぇ～」
「はい、よろしくお願いします」
　澪は電話を置いて、ふぅと一息ついた。
　まさか合格するなんて。実感のわかない澪だったが、そうも言ってられない。なんといったって、もう手続きをはじめなければいけないのだから。
　入学前準備課題やら、入学金の振込手続きやら、学生証の発行手続きやら……大忙しである。
「……学校の先生か」
　そんな未来が来るのだろうか？　もし来るのなら、素敵な未来にしたい。
　澪は合格通知を胸に、窓の外に目をやった。
　今日も寝子島はいい天気だ。

　彼女以外ににも嬉しい通知を受け取った人が居た。それはねむるだ。
　不正者を見つけ、その上大きな騒ぎにせず（つまり他の受験者に迷惑をかけず）処理をしたということで、バイト代に特別手当がつく、というものだった。
　思わぬ臨時収入に喜ぶ彼は、やはりあくびをしているのだった。

　それから忘れてはいけないのが、寝子高生徒会長・海原茂の受験結果。
　落ち込んでいた茂の目撃情報からするに――彼の受験戦争はまだまだ続く！

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あとがき

担当マスター：つるこ。
ファンレターはマスターページから！

ご参加くださった皆様おつかれさまでした！
悲喜こもごもの結果ではありますが、このシナリオがそれぞれの将来のほんの少しでも足しになればいいなと思います。
さて、今回は多く語ることもありません。リアクション内に入れきったかなと思うので。

ということで、なにかご意見等ございましたら、気軽によろしくお願いいたします。
それではありがとうございました。またご縁がございましたら。

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