【水泳大会】多分、生死を賭けた戦い（白猫サイド）｜リアクション

【水泳大会】多分、生死を賭けた戦い（白猫サイド）

【激突！　バタフライ！　スタート編】（黒２　白１）

　各選手が、それぞれ準備運動をしている中、一人やる気はあるが、どうも肩に力が入りすぎている人が居るのを寿美礼は見つけた。
　その人物とは、仲村渠鳴である。
「どんな泳ぎをするにしてもあたしは負けたくない！　今までの対戦成績は黒猫組の圧勝みたいだけど、今回勝って流れをひっくり返す！　だから、頑張らないと！」
　そう言いながら、準備運動をしていた。
「やっ！　どう？　調子は？」
　そう言って、寿美礼は話しかける。
「バッチリです！　勝ってみせます！」
　水泳部の部長であり、先輩である寿美礼に話しかけられてちょっと緊張しつつも鳴は元気よく返事をする。……が、どこかまだ堅い感じがする。
「勝つのは大事だけど、まずは力抜いてね。頑張っても負けたとしても大丈夫！　まずは、楽しむ！　そして勝っちゃえばいいんだよ！　ほら、周りを見てみなよ」
　そういって、主に志波武道が騒いでいる付近を敢えて教える寿美礼。
　ちょうど、放送席あたりで、なにやらわいわい騒いでいるようだ。
　そんな、リラックスをした光景を見て、鳴の緊張はほぐれる。
「じゃ、あたしは運営の協力があるからいくね！　これは勝つためのおまじない！」
　そう言って、ぽんぽんと軽く背中を叩いてから、寿美礼は去って行った。
　鳴の緊張もだいぶ緩んだのであった。

　……。

「いぇーい！　見てる－？　審判をちょっとお休みしてマイク持っちゃうぜ☆！」
　そう言って、マイクを持たされたのは武道である。
　軽い調子のアナウンスが飛ぶ。
「さてさて、1コースから選手の名前を呼んじゃうよん！
　1コース、黒：鏡箕萌　選手　『やっとあたしの番か！　待ってたぜ～』
　2コース、白：仲村渠鳴　選手　『あたしはあたしのやり方で勝つ！』
　3コース、黒：咲州寄居子　選手　『勝負には負けたくないな』
　4コース、白：マウル・赤城・スティック　選手　『足を引っ張らないようにしよう』

　おぉ、麗しの水着！　はじける健康！　いいじゃん！」
　なお、他のコースは一般生徒がアナウンスされた。
「さて、位置に着いたかな？　じゃあ、始めちゃうぞ☆　よーい……」
　ドォンッ！
　と、空砲が鳴り響くと、一斉に選手達は飛び込んだ。
　そのまま、萌と寄居子がスタートダッシュを快調に決める。
　鳴とマウルがやや出遅れてそれに並ぶ。
　バタフライはモーションが他の競泳に比べて大きい、選手達の動きにバシャバシャとプールの水がはじけ、快晴の青空にきらりと光った。
　そんななか、萌はひたすら飛ばして進んでいく。
（折角競うんだから、目指すはもちろん一番！　頑張るぜ！）
　そう思いつつ、どんどん前へ、前へ。
　そんな萌の次に、寄居子が続く。
（幼い頃から、女子の水着見たさに年中プールや海に通っていた僕の力を発揮する時だ）
　なんというか、素晴らしいスピリットである。
　やや、邪な気がしないでもないが、継続は力なりとも言う。
　女子の水着をどれぐらい拝めたかは別として、泳ぐことに対して経験を積んでいるのだろう。
（ダイバーとしてドルフィンキックには自信がある。結果的に、速度はついたようだ）
　そう言いつつ、泳ぐのに集中していく。
　一方、鳴は、泳ぎながら先ほどのことを思い返していた。
（楽しむことが大事かぁ……それを聞いて肩の力が抜けた気がする。それに……）
　泳ぎながらも、差がつけられているのが分かる。
　これは、出し惜しみをしていられない！
　そう思いつつ、速度を上げていくのであった。
　そんな鳴とは対照的に、マウルはマイペースに進む。
（こんなものかな？）
　マウル的には可も無く不可も無くといった感じであろうか。
　人数調整としての出場だったため、まだ本気を出すときではない。
　そして、順位は変わらぬままターンへとさしかかる。