夏の！　まとめてハッピーバースデー♪　７月から９月まで☆｜リアクション

夏の！　まとめてハッピーバースデー♪　７月から９月まで☆

　午前6時。スマホの目覚ましが鳴って、初瀬川理緒は目を覚ましました。
　傍らで眠る佐和崎紗月の寝顔を見て、顔をほころばせます。
（かわいい)
今日、7月31日は紗月の20歳の誕生日です。
（先月はあたしが誕生日を迎えたからあたしは１カ月だけ紗月より「お姉さん」だったけど、これでタメになった）
　だからって別にそれで関係がどうこうするわけではないのですが、お姉さんであることも、追いつかれることも、なんだか嬉しいのです。

　先月の理緒の誕生日は仕事先で祝ってもらいましたが、今日は仕事はオフ。
（大学はつい先日期末試験を終えて夏休み♪　というわけで、今日一日は紗月とのんびり過ごせる）
　どこかへ出かけるのもいいし、このままおうちで過ごすのも悪くない……
　などとあれこれ考えていると、紗月が起きてきました。
「おはよ、紗月」

　目が覚めた紗月は、隣に理緒がいないことに気づきました。
　起き上がりながら思い出します。
（そういえば、今日は私の20歳の誕生日。理緒ちゃんに遅れること1カ月で同い年になったんだ。なんだかあまり実感はないけれど……）
　寝室を出ると、理緒の姿がありました。
「おはよ、紗月」
　笑いかけてくる理緒に、紗月も微笑んで。
「おはよう」
　と挨拶を返しました。

　それから一緒に朝の身支度を済ませて簡単に朝食をとると、理緒は、
「今日、何する？」
　と尋ねました。
　すると紗月はスマホを取り出し操作して、理緒に見せました。
「恋愛映画特集？　木天蓼市内の名画座だね」
「理緒ちゃんと一緒に映画観たいな」
　紗月の言葉に、理緒は少し考えます。
「いいね。そういえば映画なんて配信で見てるから映画館なんて久しぶり」
「そうだよね。たまにはね」

　そんなわけで二人はねこでんに乗って本土に渡ったのでした。
　名画座で確認すると、今日上映しているのは今から60年くらい前のモノクロの恋愛映画でした。
　チケットを買って中へ入ると、平日のせいかお客はちらほらとしかいません。
「私たちを入れて10人くらいかな」
「のびのびと見れそうだね」

　まもなく映画が始まりました。
　古めかしい白黒画面は見慣れないものでしたが、あっという間に二人は映画の世界に引き込まれていきました。

　海辺の田舎町で、ヒロインは幼馴染の彼と再会します。
　けれど町で働き始めた彼が、絡まれている女性を助けていい雰囲気になり。
　彼女にも、家の借金を帳消しにしてやると金持ちの男性が言い寄り。
　すれ違いや誤解、身を引こうとするヒロイン。
　展開自体はよくあるパターンでしたが、出演者の演技の良さと演出の魅力か、昔の話とは思えないくらいストーリーにのめりこんでしまいました。
（あー、そうなっちゃうか。じれったいな。気弱なところが紗月に似てるかも）
（そうじゃないのに。彼女を信じてあげて……思い込みが強いところが、なんか理緒ちゃんっぽい）
　途中までの展開がもどかしくて悲恋フラグも立ったりして辛く感じましたが。
（そう！　でかした！）
（よかった……やっとわかりあえたのね）
　最後は収まるところに収まったハッピーエンドで、理緒も紗月も大いに満足したのでした。

　興奮冷めやらぬまま寝子島に帰りつくと、空は綺麗な夕焼けでした。
　なんだかそのまま家に戻るのは勿体なくて。
「ね、寄り道しようか」
「うん」
　二人の足は寝子ヶ浜海岸へ向いていました。
「よかったね」
「うん、ハラハラしちゃったけど」
　海を見ながら二人は映画の感想を言い合います。

　すっかり星が出てきた人気のない夜の浜辺で。
「私たちもあの二人みたいになれたらいいな」
　と理緒は言い、紗月も頷いて。

　二人は寄り添いあい、映画のシーンのように、キスを交わしたのでした。

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