部活の夏、サークルの秋｜リアクション

部活の夏、サークルの秋

　寝子高1年の朝永真深は、水泳部員として本土で行われている県大会の地区予選にエントリーしました。
　真深は飛込競技、親友の手島ゆかりはバタフライと個人メドレーでそれぞれ出場です。
「クロールではエントリーしないの？　得意でしょ？」
　カーリーことゆかりに訊かれましたが、
「うん、クロールは先輩たちもいるし、今回は飛び込みに専念するわ」
　寝子高には飛び込みの設備がないので普段は寝子島スポーツセンターで練習していますが、クロールは寝子高のプールでの練習なので少々面倒なのです。

　真深の出番はまだ先なので、まずはカーリーの応援をしに向かいました。
　緊張している様子のカーリーに手を振ります。
「カーリー、頑張って！」
　こちらに気づきカーリーも手を振り返してくれました。
　まずはバタフライ。
　位置につき、合図とともに飛び込んだカーリーは力強く水をかきます。
「いい線行ってる！　がんばって！」
　上級生にもひけをとらない泳ぎと思えましたが、一歩及ばす。
「どんまい。次はメドレーね」
　しかし後半で失速し、抜かれて惜しくも予選落ちとなりました。
「あー、もう悔しい！」
　と嘆くカーリーに、
「惜しかったね。すごくいい泳ぎだったよ」
　真深は慰めの言葉をかけました。
　カーリーは真深の顔を見つめて、
「真深はがんばって。応援してるからね」
「うん」
　頷いて、真深は自分の出場場所へ向かったのでした。
　

　いよいよ真深の出番です。
　板飛び込みは３メートルの高さから板を使って飛びますが、高飛び込みは３倍以上の１０メートルの高さから飛びます。
　一瞬が勝負の飛び込みは精神の集中が要求される競技です。
　真深は目を閉じて深呼吸、集中しました。
（練習通りにやれば、きっとできる）
　イメージの中の真深が、笑みを浮かべ宙を華麗に舞いました。

　そして合図。
　真深は助走をつけ、ひねりを加えた前飛び込みで空中に躍り出ました。
　空中で宙返り1回半、ひねりを1回転。
　そして前宙がえり1回半している最中にひねりを1回転半。

　そのまま綺麗に水しぶきをあげて水中へ。
（やった）
　特にミスはありませんでした。
　入水の際のしぶきが大きかったかも……と気になったものの、全体的にはいい線いった、と思えました。
「真深、すごい！」
　カーリーの声が聞こえ、水から上がった真深はそちらに笑顔を向けたのでした。

　しかし、上級生たちの演技はそれ以上のものでした。
　高いジャンプ、切れのあるひねりに真深の自信は砕け散り。
　結果は……予選落ちでした。

「残念だったね……良かったのに」
　カーリーが慰めてくれましたが。
　真深は悔しい顔は見せず胸を張りました。
「来年はパスしてみせるわよ」

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