スタジオガブリの世界展｜リアクション

スタジオガブリの世界展

◆それぞれの好み

　週末。
　星山真遠は友達の文梨みちると森繁美術館を訪れた。目的は現在開催中の『スタジオガブリ展』だ。真遠は司法書士兼行政書士、みちるは弁護士として多忙な日々を過ごしている。仕事で一緒に行動することもあり、真遠がふとガブリの話題を振ったのがきっかけだった。彼女もアニメやゲームを好むタイプだったようで話が弾んだ。それならばと、どうにか予定を合わせて今回の展示に２人でやってきた。
　展示を巡りながら好きなガブリ作品の話をする。

「俺は『ニャウシカ』『ニャピュタ』『紫の豚』が好きかな」

　監督の宮澤隆がミリタリーへの造詣が深いため、真遠はその辺りの考証が効いているアクション系統が好みだった。もちろん『おとなりのトロロ』や『美女の特急便』『滝の上のポニャ』なども好きだが。

「私は『トロロ』『美女特』『あやかし姫』あたりが好きね」

　あとはニャピュタなんかも好き、と付け加えた。作品数が多いとお互いの好みが出て面白い。２人は最初にジオラマコーナーへ向かった。作品のシチュエーションに入り込んで撮影できるというのは魅力的だった。
　みちるはトロロなどのジオラマに入って写真を夢中に撮っている。真遠も自分の好きな作品のジオラマを満喫した。そうしてお互いに好きな作品を堪能したら美女特のアトリエセットで記念撮影。そして２人は資料展のスペースへと移動する。

（やはり実物を見るのは資料集で見るより感動的だよなあ）

　作品の制作中のセル画や設定資料、スタッフや監督の裏話などが展示されている。特に彼は設定資料を基に作られた模型に夢中だった。こういうイベントが無いと、これらはなかなか目にすることがない。

（俺としてはこっちのほうがいいな）

　ジオラマも楽しかったが、真遠はこちらのほうが興味を惹かれた。みちるは彼とは対照的にキャラデザなど、イラストに関する展示を目で追っていた。しばらく美術館のなかを探検するように歩き、最後は物販コーナーに立ち寄った。
　真遠は迷わず設定資料集を手にとってレジに並んだ。先に会計を済ませて廊下でみちるを待つ。

（みちるは多分グッズを買うだろう……おそらくトロロだな）

　そんな予想を立てていたらみちるが真遠のもとへ戻ってきた。その手にはトロロのキーチェーンがあって、思わず彼は微笑んだ。帰り道で真遠が微笑んだ理由を話すと、みちるも彼の買ったものを的中させて笑いあった。

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