行列しない、寝子島ニャン博｜リアクション

行列しない、寝子島ニャン博

◆アルバイト

　朝永真深は親友の長島ゆかりと『寝子島ニャン博』へやってきた。
　しかし彼女たちは来場者ではなく、週末コンパニオンのアルバイトだ。担当は『寝子島の乗り物パビリオン』で、朝から可愛い制服と猫耳カチューシャをつけて張り切っている。ここは未来の乗り物を模索するパビリオンで、２種類の猫型キャットバスに試乗できる。『自動運転キャットバス』は、運転手がおらず、決められたコースを自動的に走る。『空飛ぶキャットバス』は試作型で、ホバー機能で宙に浮く乗り物。どちらも人々の関心が高いようで、早い段階で行列ができあがった。

「自動運転は衝突回避バッチリ！　空飛ぶ方はホバーでふわっと浮くよ！」

　真深たちはやってくる来場者にそうやって元気に説明と挨拶を届けている。

「次はおじいちゃんかな？」
「いや、子供連れでしょ！」

　ちょっとした雑談を挟みながら２人とも楽しく接客をしている。会場は大盛り上がりで、客足が途絶える様子がない。それでも昼頃にはいったん落ち着き始めた。今なら自分たちもこれに乗れるのではないかと閃いた。２人はスタッフに許可をもらうと早速行動に移した。
　まずは『自動運転キャットバス』から。運転手なしでスイスイ走るし、かなりスムーズだ。カーブも安定感抜群で、もう免許はいらないと２人ともテンションが爆上がりだった。次は『空飛ぶキャットバス』。ホバー機能でふわっと浮く感覚に衝撃が走る。

「マジで未来すぎる！」

　真深は思わず叫んでしまった。感動のあまり、ゆかりはこれで学校に行きたいと冗談を言った。それがあまりに面白くて２人で腹を抱えて笑った。乗り心地も最高で自分たちがSF映画のヒロインになった気分だ。
　乗り物を満喫した２人はふたたびアルバイトの仕事に戻った。落ち着いていた待機列にふたたび来場者が並ぶ。

「本当にふわっと浮くよ！」

　実際に乗った後だと、説明も具体的になり熱も入る。さまざまな来場者に応対するうちにアルバイトの時間が終わった。なかなか疲れたが、ゆかりと手を挙げてハイタッチする。

「来週も絶対楽しもうね！」
「うん！」

　パビリオンのキラキラした雰囲気と親友との時間。最高の週末になったと真深は感じた。

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