行列しない、寝子島ニャン博｜リアクション

行列しない、寝子島ニャン博

◆猫たちとの暮らし

　梓智依子はGWの初日に娘の梓楓、祖父母とともに『寝子島ニャン博』へやってきた。
　寝子ヶ浜海岸に作られた広大な特設会場は人でいっぱいだった。ぶつからないように気を付けながら入場すると３つのパビリオンが見えてくる。そのうちの１つである『猫と未来のパビリオン』では猫がたくさんいた。しかもくつろいだり、すやすや眠っていたりと自由に過ごしている。
　普段から猫だらけの島で暮らしている智依子たちには当たり前の光景だが、島外から来場した人々は珍しいようで、興奮したりメロメロになっている。智依子はパビリオンの展示よりも、むしろそっちの方に気を取られる。
　しかし悠長にしてはいられない。
　気を抜くと楓が弾丸のように猫に向かって突撃していくのでその都度ハラハラさせられる。進んだ先にあった『猫とクラス未来空間』のモデルルームでは自動エサやり機や猫用機能性食品などが展示されていた。技術の進歩が猫たちとの生活に活用されるのは寝子島ならではともいえる。

（ここでも猫たちが気ままに歩いている……）

　何気なく猫たちを眺めていると見知った姿があった。週刊かぎしっぽの記者であるねこねこだ。ねこねこも智依子たちの姿を見つけると駆け寄ってきた。

「智依子ちゃんも来てたのにゃ」
「ねこねこ記者も来てたんですね」
「今回のニャン博を取材してるにゃ」

　そう話しながら関係者がつける腕章を見せてくれた。

「あー、ねこちゃんだー」

　楓もねこねこに気づくと駆け寄ってすりすりもふもふ。彼女はコンパニオンの方からＡＩねこじゃらしを借りて、記者とじゃれあい始めた。智依子はその様子をスマホで撮影する。最後にねこねこに礼を言ってから別れた。
　その後は他２つのパビリオンを回り、フードコートで海鮮やきそばとイベント限定の猫まんじゅうを食べた。そして最後は小屋根リングの屋上へ向かい、夕暮れの寝子島を見てニャン博を締めくくった。

このページにイラストを設定する