行列しない、寝子島ニャン博｜リアクション

行列しない、寝子島ニャン博

◆未来の世界

　稲積柚春はウォルター・Bとともに『寝子島ニャン博』にやってきた。彼はどの展示も興味があるようでテンションが高いのが窺える。

「目移りしちゃう気持ちはわかるけど、計画も立ててあるんだから順番に、ね？」
「そうだねえ」

　今回のイベントは『行列しない』を売りにしている。
　本家の万博よりも規模は小さいものの、シンプルな地域密着型にすることで各パビリオンを充実させている。それでも混雑することは予想できたのであらかじめ予約は済ませてある。もちろん抽選で外れたところは当日予約をするか、並ぶしかない。

（でもこうしてお喋りしてたら、あっという間だよね！）

　色々な展示を楽しみつつ、近未来的なご飯や地域のオススメお菓子を食べて休憩。訪れた場所の感想や食事の話題で会話が弾む。

「それじゃそろそろ、今回ウォルターが一番楽しみにしていたのに行こうか！」

　彼が楽しみにしていたのは『寝子島の乗り物パビリオン』の猫型キャットバス。とくに『空飛ぶキャットバス』の試作型が気になっていた。ホバー機能で宙に浮く乗り物で、近未来の乗り心地を謳い文句にしている。
　現地で実際に乗ってみると、地面との接触が感じられないのにちゃんと前進していることに驚いた。普段乗っているスポーツカーとあまりに乗り心地が違う。同乗している柚春もウォルターの運転する車との違いを感じていた。

「なんだかすごいねワット！」

　そう言って隣に目を向けると、彼の目は少年のように輝いていた。それから他のパビリオンも一通り楽しんだら、リングの上でマジックアワーを寄り添って眺める。

「小さいって聞いてたけど、色々あったね」
「そうだねえ、フードコートも美味しかった」

　２人で会場を巡った思い出を語る。
　未来がそこまで来ていると実感できる機械や猫たちとの共存を考えた寝子島らしさを実感するものなど様々だった。『ニンゲン洗濯機』ではエッチなハプニングもあったが、惨事にはならず振り返れば笑い話だ。

（夕日はどこでだって見えるけど、今日ここで一緒に見たのがワットで良かった）

　もうすぐ完全に日が暮れる。改めて彼の顔を見つめる。

「どんな未来がやってきても、一緒にいようね！」

　彼女の言葉にウォルターはしっかり頷いた。

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