青の庭園｜リアクション

青の庭園

　――時間があれば、ネモフィラ畑を見に行ってはいかがですか？

　本土の地元署の方からそう連絡が入った水槻清恋は、寝子島に帰るまでの時間つぶしにということで国立公園へと足を運ぶ。
　地元所の方々は『凄い』や『綺麗』と言った感想を伝えてくれたが、いまいちピンとこなかった清恋。
　しかし実際にネモフィラ畑に立ち入ってみると、一面に広がる青の花畑に心を打たれ、彼らの感想が本物であることを実感した。

「すっ……ごいなぁ……」

　風とともに飛んでゆくネモフィラの花びらとともに、清恋の心が少しだけ軽くなった。
　これまで仕事に追われてなかなかのんびりする機会もなかったもので、こうしてのんびりできる機会を作ってもらえたことには地元署の人々に感謝しようと思うほど。

　そんな中、遊覧ヘリコプターが飛ぶ瞬間を目の当たりにした清恋。
　地上から見るネモフィラ畑も素晴らしいが、空から眺めたときのネモフィラ畑はどのように映るのかが気になった。
　１０分程度の遊覧フライトではあるが、それでも十分に楽しめている様子は他の客の表情を見ればわかる。このフライトだけでも思い出となりえるほどに素晴らしいと。
　そうと決まれば遊覧ヘリコプターのチケットを購入し、乗務員の指示に従って乗り込んだ清恋。ゆっくりと持ち上がる機体の外を眺めながら、離陸を待った。

「お、おお……」

　離陸の瞬間、先程までいたはずの地上が遠ざかっていく様子を見て、清恋の心は弾んだ。
　ヘリコプターなら警察の立場上、何度か乗ることはある。離陸の瞬間が待ち遠しくなるときもある。
　でも、今。この瞬間だけは立場がどうであれ、見ることは出来ないだろう。

　地上にいる時は空とも違う青に圧倒されていたが、ヘリコプターで空から見ると更にその違いが際立つ。
　海のようでそうではない、まるで地上が水底へ落ちてしまったような色合いが見える。
　これが本当に花畑なのか？　と本格的に錯覚しそうになる時には、ヘリコプターは地上へと下りていた。

「すごかったな……」

　圧巻の美しさはいつの間にか清恋の疲れを癒やし、心を晴れやかにする。
　とはいえ喉の渇きまでは癒やすことが出来なかったので、ひんやりと涼しいネモフィラアイスを買って潤すのだった。

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