青の庭園｜リアクション

青の庭園

「「「おおーっ」」」

　唐突に上がる複数人の歓声。その中には中倉琉歌の姿もあった。
　声を上げたのは寝子島高校陸上部の部員たち。丁度本土では記録会が行われており、その帰りにこのネモフィラ畑に立ち寄っていたのだ。
　一面に広がるネモフィラには陸上部顧問の浅井幸太も驚きの表情を見せるほどに素晴らしく、しばらくこの場での休憩が行われることになった。

「ネモフィラアイス……？」

　そんな中で琉歌は売り出されていたアイスに目が行った。
　他の陸上部部員もちょこちょこと購入しているようで、美味しい、という声が上がっている。
　青い色をしているからミント味だろうな、と購入してみるとまさにその通り。少し強めなミント味が口から鼻からすっと通り抜けていった。

　食べ進めて数分ですっかり空になり、もう少し歩いてみようとネモフィラ畑を散歩する琉歌。
　そのうち、丘の上にある教会へとたどり着いて、３つの鈴が掲げられた『誓いの鈴』を見つけた。

「えっと、なんだっけ。順番に鳴らすと……」

　教会まで訪れたことのある客いわく、誓いの鈴は３つの鈴を順番に１つずつ鳴らしていくことで願いが叶う……という話がある。
　実際に願いが叶うかどうかはわからないが、それでもこの鈴目当てで訪れる人は少なからずいる。
　それならと琉歌もまた、鈴を順繰りに鳴らして願いを頭の中で思い浮かべる。今日の記録会で出た１００メートル走の記録を思い起こしながら……。

（……次は、更に記録を更新できますように……）

　自己ベストの１２秒６１を、少しでも早くしたいと願いを込めた琉歌。
　軽やかに鳴り響く鈴の音は彼女の心に出来た願いを聞き、ネモフィラ畑に広がっていった。

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