寝子島の四季彩展・春｜リアクション

寝子島の四季彩展・春

　寝子島の四季彩展。
　その名の通り、寝子島の四季折々の風景を表現した多数の芸術作品の展示会。
　今回の作品は『春』をテーマとしたものが並んでおり、桜を中心とした作品が多く並んでいた。

「おおー……」
「すごいねぇ……」

　桜井ラッセルは風の精晴月と共に森繁美術館でのデートを楽しんでいる。
　普段とは違って静かな場所ではあるが、ラッセルが熱心に晴月を説得した上での来訪だった。
　結果、思った以上に晴月は楽しんでいる様子を見せたため、彼女の気の向くままにペースを合わせて美術館内を楽しんでいた。

　特にラッセルが興味を持ったのは『ねこざくら』。丸まった猫を花弁に見立て、一面に咲き誇る桜の木を描いた水彩画だ。
　猫と桜と言ったら大体が桜の木の下で眠る猫などが思いつくが、この水彩画はそんな一般的な形を乗り越えて作り出しているのでラッセルも関心が向いていた。

「桜と猫の共演ってどんなもんかと思ったけど、考えたもんだよな～……」
「ね～。丸まった猫を花弁に見立てるって、普通は思いつかないよ～」

　その他にも春をテーマにした芸術品を見て回るラッセルと晴月。
　緩やかな作品が多い中、『始まりを告げる春』といった一風変わった『春』も並んでおり、柔らかで繊細なタッチの桜の水彩画、荘厳な雰囲気を持つ桜の油絵、本物にも見える粘土細工などが鎮座していた。

「この桜の濃淡いいな……。写真を切り取った、ていうか」
「本当に桜の花びらがあるみたいだよね。どうやってこの色出したんだろ……？」
「わからん……！　やっぱ芸術家ってすごいや」

　あれやこれやと見て回って、最終的にすべての『春』を見て回ったラッセルと晴月。
　終わりがけにラッセルが晴月に『好きなのはあったか？』と問いかけられたが、晴月は『ないしょ♪』と返してラッセルの手を握りしめていた。

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