にゃごにゃご！　カードゲームライフ｜リアクション

にゃごにゃご！　カードゲームライフ

◆気になるスマホの画面

　稲積柚春はウォルター・Bの家で彼と過ごしていた。彼は居間のソファに腰掛けてスマホを操作している。彼女がスマホをのぞき込むように話しかけると、さっと隠されてしまう。

（ちょっと不信感……同じように僕がスマホに夢中になってたら、ワットは不安にならないのかな？）

　そう思った彼女は、ある実験を閃いた。まず、おすすめ欄に並んでいた『にゃごにゃご』をダウンロード。どうやらカードゲームらしい。

（カードゲームのルールは分からないけど、集めるだけでも楽しそう！）

　レア度が低いと言われたって、見た目が気に入ったら育てたくなる。

（……育成も楽しめるよね？）

　詳しく調べずにダウンロードしたので、ゲームシステムはよく分かっていない。それにこのゲームを始めた目的は実験のためだ。チラチラと彼の様子を見ているが、ウォルターと目線が合わない。彼がこちらを見ていないのか、あるいはタイミングの問題かもしれない。
　２人とも同じ部屋にいて近くにいるのに会話は無い。もし彼にスマホをのぞき込まれたら、見られないように隠すつもりだ。

（だって、気に掛けてほしいからスマホを触っているのに、こんな子供じみたゲームやってるだなんて知られたら、作戦が無駄になっちゃう）

　俯瞰して見ると、この状況自体が不毛かもしれない。それでも彼女は真剣だ。でも喧嘩はしたくないから、ちゃんと聞かれたら答えるし画面も見せるつもりだった。そのときは彼にも何をやっていたのか勇気を出して聞こうと考えていた。
　するとウォルターがすっと立ち上がって、柚春のほうにやってきたかと思うとスマホの画面を見せてきた。そこにはキラキラと輝く『にゃごにゃご』のカードが映し出されていた。

「この猫、可愛いと思わないかい？」

　思わずキョトンとしてしまう柚春。どうやら彼は柚春にこのカードを見せたくてパック開封を頑張っていたらしい。

「最近話題のゲームみたいでねえ、もしよかったら柚春も」
「あ、その」

　柚春はそっと自分のスマホをウォルターに向けた。まさか同じゲームを遊んでいたとは思わなかった。彼もその偶然に驚き、そして嬉しそうに微笑む。それからフレンド登録を行って、トレードやバトルを楽しんだ。
　一区切りついたところで柚春は声を掛ける。

「こういうのも楽しいけど……ゲームの時間は決めて、２人の時間も大切にしていこうね？」

　ウォルターはスマホを置いて、彼女のほうを向くとしっかり頷いた。

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