にゃごにゃご！　カードゲームライフ｜リアクション

にゃごにゃご！　カードゲームライフ

◆勝負の行方

　綾辻綾花は早川珪先生の自宅に遊びに来ていた。他愛ない雑談のなかで、ふと綾花が思い出した話題を振る。

「珪さんは『にゃごにゃご』って知ってますか？」
「名前は聞いたことがあるよ」
「スマホゲームらしいです。大学のお友達から教えてもらいました」
「どんなゲームなんだい？」
「私も詳しくなくて……でも猫のモンスターって聞いたら気になっちゃって」

　そう話しながらスマホのホーム画面を見せる。アプリはインストール済だが、まだ一度も起動していない。珪先生も興味が出たのか早速インストールした。どうやらカードパックを開封してデッキを組むらしい。２人とも初めてなので手探りで話しながらスマホを操作する。

「あ、珪さん見てください！」

　パックを開封するとテオによく似た八割れ猫が出てきて、思わず彼に見せた。

「珪さんはどんなにゃごが出ましたか？」

　彼のスマホ画面には、陽だまりのなかで丸まっている三毛猫のにゃごがいた。

「可愛いから集めたくなる気持ちも分かりますね」
「そうだね」

　その後も何パックか開封してデッキを組んだ。対戦で勝つデッキというよりも好きなにゃごを詰め込んだ感じだ。

「折角ですし一回対戦してみましょうか」

　そう言ってお互いに向かい合ってスマホを構える。対戦までにロード時間が挟まる。

「そういえば、今回も勝ったほうが次のデートの行き先決めますか？」

　綾花はそんな提案をした。以前にもカードで対決したことがあり、珪先生が勝って次のデートに行くところを決めたことがあった。

「わかった、そうしよう」

　ロード画面が明けてフィールドが映し出される。勝負といってもお互い素人なので、目を見張るような展開は無かった。点数計算する時間よりも自分のにゃごや相手のにゃごを褒め合うほうが長かった。それでも熱中してくると真剣な表情になる。最後は珪先生が押し切って勝利を収めた。

「なかなか楽しいね、このゲーム」
「そうですね」

　綾花がスマホから顔をあげると珪先生の顔がだいぶ近くてドキドキしてしまう。白熱するうちに距離がだんだん近づいていたようだ。その距離を意識すると、珪先生に引き寄せられるように軽くキスをした。少し恥ずかしくなった綾花はすっと立ち上がる。

「ゲームもひと段落しましたし、お昼にしますか？」
「そうだね。今日の献立は？」
「パスタです。楽しみに待っててくださいね」

　そう言い残してキッチンへ向かった。　

（珪先生、次のデート先はどこにするんでしょうか。楽しみです）

　ゲームには負けたものの、それは些細なことだった。彼が次はどこへ連れて行ってくれるのか。彼と行くならどこでも楽しいだろう。綾花は期待に胸を膨らませると、自然と笑みがこぼれた。

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