ブラック（Ｂ）レイク（Ｌ）異世界譚｜リアクション

ブラック（Ｂ）レイク（Ｌ）異世界譚

　黒い稲妻～Black Lightning

　ここは、ブラックレイクにほど近い村。村の酒場には、冒険者であるナナセ（倉前七瀬）とウォルター（ウォルター・B）がいて、集まった村人たちの悩みを聞いていた。
「なるほど、黒く波立つブラックレイクは、もともとは青く美しいブルーレイクだったのですか」
　ナナセは、依頼人の言葉に、ふむん、と頷く。
「このままではいけません！　フジコを説得してブラックレイクを元のブルーレイクに戻してもらいましょう」
　力拳を握るナナセを、相方のウォルターはどうどうと落ち着かせる。
「フジコは湖の中の島にある城にいるんだよねぇ。どうやって城まで行くのかなぁ？　僕も君もそんなに泳ぎは得意じゃないし、小舟で行こうにもフジコが魔法で高波を起こしてるって話じゃない？」
　ウォルターの意見はもっともである。
　しかもフジコは、フジコハリケーンとかいう竜巻魔法まで使うという話だ。
　どうしたものか悩んでいると、ちょいちょいっと依頼人がナナセの袖を引いた。
「え、依頼人さんに考えがある？」

◇

　ところ変わってブラックレイクのほとりでは。
　フジコから逃げてきたというウナバラ（海原茂）を抱きかかえて介抱し、彼の体験した恐ろしい話を聞いていたソルト（響蒼留人）は、思わずぶるぶるッと身震いをした。
「どうしたソルト」
「いや、なんだか悪寒が……」
「わかる！　フジコは恐ろしいやつなんだ！　俺も震えが止まらないさ！」
「だが、まだ生贄として囚われている人がいるんだろう？　放っておくわけにもいかないよな」
「どうするんだ？」
　ウナバラが心配そうに尋ねる。ソルトは前向きに言った。
「仲間と協力すれば、きっとフジコを倒せる！」
　ソルトはさらに前向きに言った。

「仲間……そうだウナバラ、悪いがもう一度イケニエになってくれ！」

「「はあッ？」」
　ウナバラの拒否の叫びに、別の叫び声が被さる。なんだ、と思ってあたりを見回すと、向こうの方で冒険者の格好をした黒髪と金髪の青年二人が言い争っている。
「ダメダメ！　ぜ～ったいダメです！」
「そんなこと言ったってほかに方法がないんじゃ、依頼人さんの提案に乗るしかないじゃない？」
　ナナセとウォルターであった。彼らは揉めていた。
「そんな、だって！　ウォルターさんをイケニエにするなんて……！」
「フジコをおびき出すだけだよぉ。生贄のふりをしてナナセも一緒に連れていってもらうんだってば。そうしてフジコの居城についたらあとはフジコをやっつければいいんだからさ～」
「いやいや、ダメです！？　ウォルターさんほどカッコよければ、きっとフジコも気に入るでしょうけど、あなたを危険に晒すわけにはいきません。だって、だって……あなたは僕にとって大切な人なので！」
　痴話げんかか？
　ソルトとウナバラは顔を見合わせる。と、ウナバラは急に企み顔になって声を顰めた。
「なあ、ソルト。ちょっと思いついたんだが」
「なんだ」
「この際、あっちにイケニエになってもらうというのはどうだろう」
「ウナバラ……いくらなんでも、その考えは鬼畜すぎないか……」
「そうか？　俺は断固、再イケニエはごめんだし、愛する二人を引き裂くなんて、フジコの大大大好物だぞ」
　そうこうしているうち、ナナセが叫んだ。
「ウォルターさんをイケニエにするくらいなら僕がイケニエになります！」
「あっ、ちょっ、そこの人、早まるな！」
　ソルトは慌てて声をかけたが、ナナセの腹は決まっていた。
「フジコ、聞こえますか！？　『イケニエを連れてきたぞー！』」
　フジコを呼ばうその呪文を唱えた途端、にわかに湖の上空に雲が立ち込め、真っ黒な稲妻が空を走った！
「あは～～～ん！　見てたわ、見てたわよぉ～ん。私のイケニエの座を巡ってそんなに揉めるなんて」
　フジコの声だ。姿はないが声はする。魔法でこちらの様子を見ていたようだ。
「いやニュアンスちがう！」
　ソルトが突っ込むが、フジコは聞いていない。
「うふふ、な～んて可愛いボクちゃんたちなのかしらぁ～ん？　いいわ～ん！　私はアソコも懐も大きいの！　み～んな揃って可愛がってあ・げ・る！」
　ぶわっと風が吹き、その場にいた四人の体が浮かび上がる。
「これがフジコの魔法なのか、ウナバラ！？」
「いやだっ、俺はまたあそこに戻るのはいやだぁぁ～！！」
「いいんだよぉ～これで」
「ウォルターさぁぁんん！」
　四人四様な喚きをよそに、フジコのドスの効いた掛け声が響く。
「あ、そ～れイッッッ！」
　直後、四人の体はびゅーんと湖の中にある島の方へ、見えない力で飛ばされてゆく！

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ブラック（Ｂ）レイク（Ｌ）異世界譚

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