放課後のスタート！｜リアクション

放課後のスタート！

　朝永真深が期待と不安に揺れながら寝子島高校に入って、数日が過ぎた。
（今日もいつも通りに退屈な授業だったな）
　始まってみれば、目新しくはあったけれどなんということのない日々だった。
（猫が多いのは驚いたけど、入学式に象が来るとかって都市伝説だったわね……そりゃそうよね）　

　なんとなくかったるい気分で帰り支度をしていると。
　クラスメイトの手島ゆかりが話しかけてきた。　
「一緒に帰ろ」
　真深の前の席で、ここ最近ではすっかり仲良くなった子だ。
「うん」
　二人は鞄を手に教室を出た。
「牛瀬先生って中学生の子供がいるんだってね」
「そのうち寝子高に入ってきたりしてね」
「見てみたいね」
　とりとめのない話をしながら歩く。
「ところで今日は放課後は何しようか」
「そうね、シーサイドタウンは昨日行ったし……」
「え、ちょっと何あれ？」

　昇降口から外を見ると、校門までの道にチラシを抱えている先輩たちがズラリと並んでいる。
「……部活の勧誘ってやつかな」
（そういえば部活の見学まだやってなかったな）
「ねえ真深、何するか決めた？」
　ゆかりが聞いてくる。
「何するって？」
「部活だよ。それとも帰宅部？」
　この様子だと、どうやらゆかりも決めていないようだ。
　ちょっと考えて真深は訊ねた。
「ゆかりは中学のとき何やってた？」
「私は水泳やってた」
「え？」
　意外な答えに目を丸くし、真深も打ち明ける。
「私も中学の時は水泳やってたよ」
「マジ？」
　ゆかりも驚いたようだ。
　体育科ならたまたま部活が被ることもままあるだろうが、二人は普通科だ。
　結構確率的には珍しいことかもしれない。
　
「真深はなにやってたの？」
　なに、というのはこの場合種目のことだ。
「あたしは飛び込み。高いところから飛び込んで、水面に落ちるまでの浮遊感が好きかな。ゆかりは？」
　久しぶりに飛び込みのことを思い出し、懐かしくなる。
「へえ……私は高飛び込みなんて無理。私は普通に競泳かな。バタフライが得意なんだ」
　そう言われると、ついゆかりの肩のあたりに目をやってしまう。
　長袖ブラウスの上からでは目立たないが、そう言われれば筋肉がついているようにも見える。
「あたしはクロールかな」
　昇降口に立ったまま二人の会話は盛り上がり。
「それにしても偶然ね、二人とも水泳部だったなんて」
「となるともうこれは……」
「「水泳部で決まりよね」」
　二人の息が揃った。

　と言うことであっさり決まってしまい、二人は水泳部の先輩を探して意気揚々と歩き出すのだった。

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