アンラッキー・ランドを攻略せよ｜リアクション

アンラッキー・ランドを攻略せよ

ヴィーゼ・ベルンスタインは目を瞬かせた。気付いたらこの場所に立っていた。どこかの遊園地のオープンゲートである。
　近くのスタッフに聞くと、ここは妙な噂が広がって、倒産寸前になっているらしい。ここに呼び出されたのはどの噂を解くため、ということだろうか。
（前にもあった気がするわね）
　まずはスタッフへの聞き込みだ。
やって来たのは、ジェットコースターのアトラクションである。スタッフが何人かいて少し暇そうにしていた。
「すみません」
「どうかされましたか？　お客様」
　営業スマイル。
「この遊園地の噂について、とくにジェットコースターのことを聞きたいのだけど」
　はっとした様子のスタッフ達が顔を見合わせる。
「えっと、まずは園長に」
「それでも良いけど、早期解決には現場の証言が必要なの。このまま噂が悪化して取り返しのつかないことになったら『不名誉』なんてレベルじゃなくなるわよ」
　真剣なヴィーゼの言葉にスタッフたちは覚悟したようだ。
一通りスタッフの話を聞いたヴィーゼは、ジェットコースターそのものの調査をすることにした。
（事故が起こったのはトンネルの出口ってことは）
　丁度家族連れが来てコースターを動かすらしいので、邪魔にならないように後ろの方に乗ることにした。
（トンネル内に何かあるかもしれないわ）
　セーフバーが首の前に降りてきて、体が固定され、発車する。
　家族連れの声が聞こえてくる。
「凄い早ーいっ」
「掴まってないと、振り落とされちゃうかもしれないぞー？」
「ちょっと〜。怖がらせること言わないでよ。きゃーっ」
　親子３人、楽しそうである。トンネルに突入し、ヴィーゼは周辺を見回すが、やはりスピードが速いため、上手く調査出来そうにない。
（一度降りてきて、レールを伝ってトンネルの中に入るしかないわね）
　乗車しながらの調査を諦め、ジェットコースターが止まるのを待ったが、しばらくして、
「ね、ねぇ！　もうやだぁ。降りたい〜」
「ちょっと、これどうなってるの？　こんなに長いの？」
「そんなはずは。5分もないはずだが」
　家族の会話。ヴィーゼははっとした。
（これが、永遠のジェットコースターなのね）
　もうすぐ10分、3周はしたのではないだろうか。
（このままじゃ、あの子達が）
　ヴィーゼは、血を操ってセーフバーを外しコースターの縁に飛び乗った。
「ふひゃ！？」
　たまたま後ろを向いた子供が目を見開く。
「大丈夫、そのうち止まるから。出来れば、止めてくるわ」
　トンネル内へ入ったところで跳躍。レールの下に着地。暗いトンネル内には何もなかった。しかし、少量の血痕が酸化し、茶色になった飛沫が存在していた。
「……この血……」
　何かは分からない。しかし、こびりついたその血は、生きているように感じた。
（呪いの原因、これかもしれないわね）
　ヴィーゼはこびりついた血の上から自分の血をかけた。
　血の羽でトンネルの外へ出ると、どうやらジェットコースターは無事止まったようだ。
　人に見られないうちに、着地し、翼を消す。
「怨念みたいなものだったのかしらね」
「おねえちゃーん！」
　遠くで例の家族の子供が手を振っている。
　ヴィーゼは苦笑を浮かべ、小さく手を振り返した。

　噂の原因は、ジェットコースター事故の被害者の血液が呪いを受けて悪影響を及ぼしているものだったのだろう。

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