カメラを持って出かけよう｜リアクション

カメラを持って出かけよう

　稲積柚春は右手薬指のペアリングをなぞって、隣を歩くウォルター・Bに笑いかけた。
「ワットも、つけてくれてるんだ」
「んー？　どうしたの、改めて。当たり前さ。ペアリング、だからねぇ」
　ウィンクを返され、柚春は少し視線を外した。
　非常に照れる。顔が赤いかもしれない。
「柚春？」
　はっとして、ウォルターを見る。
「あ……。なんでもない。ねぇ、恋人たちの丘に行こうよ。ネモフィラとか、菜の花咲いてないかな？」
「少し早いかもしれないけど、行ってみようかぁ？」
　花畑でのぬい活はあまりしたことがないような気がする。特にネモフィラが満開なら、嬉しいが。
　柚春はそんな淡い期待を抱いていた。
　そして、
（凄い）
　徒歩でやってきた広大な花畑には水色の小さな花が咲き誇っていた。満開の手前といったところだろうか。あまり人がいないのは、微妙に時期がズレているためだろうか。
「来て正解だったかもねぇ」
　柚春はさっそく、ворを飾ってスマホのカメラのシャッターを切った。
　パシャリ。
「花畑のворもいいよねぇ…休息の戦士って感じで格好いい！　絵になるなぁ」
　指でつついていると、パシャリと音がした。
「！　あー、ワット。いきなりは良くないよ！」
「ごめんごめん。でもほら」
　見せられた写真は、花畑にしゃがみこんで笑顔を浮かべている柚春の姿だった。
「笑顔が綺麗だったからねぇ」
「！」
　不意打ちで力が抜けてしまい、後ろに倒れそうになる。
「ひゃっ」
　尻もちをつきそうになってワットに抱きかかえられる。
「あっちょっ」
　お姫様抱っこで持ち上げられ、地面に降ろされる。
「大丈夫かい？」
　頭にふわっと下ろされた手に撫でられ、顔がかっと熱くなる、
「あ、ありがとう」
「気をつけないとねぇ」
「う、うん」
　それから、ворとウォルターを撮りつつ、最後に2人で記念撮影をすることに。
「自撮りになっちゃうけど、良いのかなぁ？」
「うん。もっと近くで、ね？」
「はいはい」
　シャッターを押す瞬間、柚春はウォルターの頬に唇を軽くつけた。
「え」
　驚くウォルター、いたずらっぽく笑う柚春。
　パシャリ。

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