トッピング☆いちご狩り｜リアクション

トッピング☆いちご狩り

　稲積柚春はウォルター・Bと共にいちご農園にやってきた。
「チョコフォンデュ？　いろいろ考えるねぇ」
　ウォルターは感心したような声をあげるが。
「トッピングがたくさんあるチョコフォンデュも楽しそうだけど今日は苺狩り！」
　そう柚春は告げる。
「だって、苺フェアのスイーツバイキングの機会はあっても、摘みたてを味わえる機会はなかなかないもの」
（ワットの食の好みはメアリさんから貰ったノートで知っているからね）
　メアリさんのお菓子は砂糖控えめの上品なものが多い気がした。

（持ち込みできるみたいだから、ワットが飽きないように工夫をしよう）
　そう思って持ち込むものを考え、今日のために勉強して豆知識も仕入れてきた。
「ワットは苺の食べ方って知ってる？」
　柚春の問いにウォルターは首を傾げる。
「練乳と一緒に食べる、とか？」
「そうだね。でもそういうことじゃなくて。苺は先端が甘いから、その逆のヘタ側から食べると最後まで甘く感じるんだよ」
「へえ、詳しいんだねぇ」
「最後が酸っぱいと残念な気持ちになるならこの食べ方がいいし、さっぱりしたいなら先端からがお勧めかな」
　そんな知識を披露しながら、色々な苺を摘む。
「練乳や牛乳と一緒に食べるのも理にかなっていて、苺のポリフェノールの吸収を促進するんだって」
「なるほどねぇ」
「一口サンドイッチやお茶も用意したから、向こうのテーブルで食べよう」
　そう誘う柚春にウォルターは頷いた。
「それはいいね。苺だけだとそんなには食べられないし」
　
　持参した暖かいお茶を注ぐと、口にしたウォルターは『お？』という顔になる。
「今ワットが飲んでいるお茶、これ、苺の葉なんだ」
「そんなお茶があるんだねぇ」
「漢方薬になってるって聞いたから覚悟して買ったんだけど、意外と麦茶みたいで飲みやすいよね」

　一口サンドにはバターやはちみつが塗ってあり、苺と合わせて楽しめる。
　おいしそうに苺サンドを食べるウォルターに柚春は言った。
「苺について色々調べてみたんだけど、花や果実に素敵な意味があるんだよね」
「へえ、どんな？」
「1つの株から子がたくさんツルが生える様子から『幸福な家庭』。それと、キリスト教では聖ヨハネ（セント・ジョン）と聖母マリアにイチゴを捧げたから『尊重と愛情』。『あなたは私を喜ばせる』っていうのもあるんだって」
「そうなんだ。スイートだねぇ」
　実は苺の赤い実は果実ではなく「偽果（ぎか）」と呼ばれる花托であることを柚春は知った。
　でもそれは言わないでおく。
（僕とワットの関係は、偽りなく愛情のはずだから）
　　

「ワット、この苺すっごくおいしかったから食べてみて」
「ああ」
　手を出そうとしたウォルターの口元に、柚春はいちごを近づけた。
「はい、あーん」
「……あーん」
　一瞬躊躇したウォルターだったが、素直に口を開ける。
「うん、美味しいねぇ」

「……ワットと苺狩りに来れて、本当に良かった」
　苺のような甘酸っぱさに浸る柚春だった。

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