寝子小・寝子中卒業式！　希望を胸に！｜リアクション

寝子小・寝子中卒業式！　希望を胸に！

　その日稲積柚春はウォルター・Bとデートに出かけるところでした。
「あれ、あの子たちおめかししてるね」
　ランドセルを背負った子たちの服装が、フォーマルなスーツだったり華やかなワンピースに髪飾りをつけたものだったり。
「そういえば今日は小中学校の卒業式だねぇ。保護者が参加できるように休日にやるみたいだね」
　ワットもそちらを見て言います。
「そうなんだ。小学校なんて懐かしいね」
「寝子島の学校は地域の人も見学していいみたいだけど、興味あるのかい？」
「卒業生ではないけど、見学してもいいのかな？　ちょっと様子を見てみようか」
　ワットと少し探検しちゃおう！
　とワクワクしながら小学校の門をくぐった柚春とウォルターでしたが。

「あれ、ここは……香りが変わってる？」
「なんだかやけに古い建物だねぇ」
　なぜか不思議な場所に迷い込んでいたのでした。

「６年生入場！」
　胸にピンクの花をつけてもらった古尾桐子は、拍手の中体育館へ入場しました。
（父ちゃん、ちゃんと遅刻せずに来てくれたッスね）
　父親の姿を見つけ手を振ります。
　しかし。
「うートイレトイレ……緊張したらトイレいきたくなったッスー！」
　桐子は、席に着く前に列を抜け、そっと体育館を出ていきました。
　キイ……
　トイレに駆け込む桐子の前に、きしむドアの音とともに個室からおかっぱの古風な少女が現れました。
（うちだけじゃなかったッスね）
　と思いつつ桐子は空いた個室に飛び込みました。
　しかし無事に出てきた時には。
「……ふー、すっきり……どこッスかここ？！
　世界は、まるで変わってしまっていたのです。
「うおおお！　トイレにいったらしらねーとこに飛ばされたッス！　どこッスかここ？！」
「あやかし学校へようこそ」
　おかっぱの女の子が言って、トイレの外へ出ていきました。
　扉はペンキも塗られていない木でできているし、振り返れば便器はみな和式です。
　トイレから出て周囲を見れば。
「見るからに普通じゃねー人がうろうろッス！」
　毛むくじゃらで尻尾や大きな耳が生えていたり、一つ目小僧だったり。
　あたりはあやかしの子供たちでいっぱいでした。
「と、とにかく急いで式にもどらねーととーちゃんが心配するッス！
（普通じゃない人に話しかけるのはちょっと怖いッスけど、ウチも来月から中学生！　女はどきょーッス！）
　桐子は、もふもふの大きな猫の子に声をかけます。
「もしもーし、すいませんッスー、ウチちょっと迷子なっちゃったんスけどどうやったら戻れるッスかね？」
「ニャ？　……もしかして、ニンゲン？」

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