寝子小・寝子中卒業式！　希望を胸に！｜リアクション

寝子小・寝子中卒業式！　希望を胸に！

　桐子が声をかけた猫のあやかしは、親切に教えてくれました。
「ニンゲンの迷子は、名前を呼ばれて返事すると幽霊になっちゃうんだって」　
「本当ッスか！　聞いておいてよかったッス」
「……さっき幽霊になった子がいるわ」
　囁き声に驚き振り向くと、トイレの花子さんがいました。
「今体育館に向かってるわ。もう一度あやかしに返事をしたら、戻れなくなるわよ」
「大変ッス！　どうしたらいいんッスか？！」　
　慌てる桐子に、花子さんは言いました。
「帰る方法は……」

　
　チャイムが鳴ると周囲のあやかしたちが立ち上がり、廊下を進み始めました。
　瀬莉は体を思うように動かせず、流されていきます。
（どうしよう……）
　困っていると、廊下に普通の人の姿が見えました。
「助けて！　元の学校に帰りたいんです！」
「人間の子？　よし、助けるよ」
　声をかけられた柚春は瀬莉を追いかけました。
　しかし手を差し伸べても、幽霊なのですり抜けてしまいます。
「どうしよう？」
　そこへ桐子が駆け込んできました。
「元に戻る方法は、人間に名前を呼ばれて返事することッス！」
「わかった！　えーっと？」
　こちらを向いた柚春に瀬莉は名乗りました。
「佐藤瀬莉です」　
「瀬莉ちゃん！　戻ってきて！」
「はい！」
　その時、伸ばした手は重なり、瀬莉は無事肉体を取り戻したのでした。
「よかった！」
「ありがとうございました」
　自分の体を確認し、ほっとして瀬莉はお礼を言いました。

「で、どうやったら僕たちは帰れるのかなぁ？」
　ウォルターの問いに桐子は答えます。
「もと来た扉を通れば戻れるはずッス！」
「よかった、みんなちゃんと帰れる？　気をつけてね」
「急いで戻らないと卒業式が終わっちゃうッス」
「……で、僕らはどこから来たかな？　ちゃんとイメージして、いざ！」
　こうして、みなは別れそれぞれの扉へ向かったのでした。

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