エメラルドグリーンの海で｜リアクション

エメラルドグリーンの海で

「本当にエメラルドの海になってるってのが凄いよな……」

　パラソルの下、ミニテーブルとデッキチェアを置いて絵描きを楽しんでいた旅鴉月詠。
　飲み物を完備し、用意しておいたスケッチブックや画材を使いエメラルドの海を描いていた。

　だが月詠はエメラルドの海を観察しながらも、普通のエメラルドグリーンの海とは少し違うな？　と感じ取っていた。
　というのも、普通のエメラルドグリーンの海というのはプランクトン等の不純物が極端に少なく、海底に珊瑚が広がって水の深さがそこまで深くない場所がそう見えるだけであり、実際のエメラルドの色とは程遠い。

「けど、今回のこの海はどっちかっていうと『エメラルドを持ってきた』って感じか……？」

　いろいろな考察を続けていくと、神魂が作り出した海なら『エメラルドを持ってきた』という表現のほうが正しい気がしてならない。
　潜れば色々と見つかるだろうが、今日の月詠はとことん絵を描くと決めた。故にスケッチブックに埋めるのは、今いる地点から見えた様々な海の光景だ。

「お、アレはクラゲか？　害はないらしいけど、あの辺が住処なのかね？」

　人々に集まっていくエメラルドクラゲの光景に、サクッとラフを書き出す月詠。
　エメラルドクラゲの生態もなかなかわからんよな、なんて呟きながら、ちょっと休憩を取った。
　人間、描いている間より休んでいる間のほうが成長するもので、ラフを前に休むことで違和感を見つけやすいのだ。

　カクテルを片手にするすると飲みながら、先に出したクラゲのラフの修正を入れてスケッチを取っていく。
　……クラゲはもともと色のないものではあるが、まあそれも寝子島不思議現象ならではだからいいか、とスルーをしておいた。

　残りの作業は涼しいアトリエで、ということでゴミを残さないように全てを片付けてその場を去った月詠。

　後日、SNSには美しいエメラルドグリーンの不思議な海と、クラゲの群れの絵が並ぶ。
　稀にある日。そんなタイトルを付けられて。

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