煌めきの星に願うこと｜リアクション

煌めきの星に願うこと

　色んな人でごった返す九夜山の頂上。
　その人混みをすり抜けるように、稲積柚春とウォルター・Bの２人が並木道を歩く。
　誰もが求める煌めきの星、その輝きを目に焼き付けて願いを叶えてもらおうと。

　けれど、天体観測は持久戦。
　流れ星を見るのと同様に、煌めきの星はすぐに現れるとは限らない。
　そのため柚春はウォルターの２人と一緒に、のんびり出来る場所で語り合いながら煌めきの星が現れるのを待った。

「色んな噂があるみたいだけど、ワットは何色の星が見たい？」
「そうだなぁ～……」
「あ、先生としてのお話は無しだよ？」
「うぐっ」

　先手を取られ、少々分が悪そうな表情をしたウォルター。
　柚春の言う通り、先生としての話をしようとしていた矢先に封じられたため、ちょっと待ってと少し時間をもらって考え、答える。
　その言葉を聞いて優しく微笑んだ柚春。そんな彼女はどんな願い事が良いのか、とウォルターに問いかけられて、これまた同じように考えた。

「うぅん……勉学にするか、ワットが健康でいてくれるように安眠をお願いするか……」

　色々な願いが頭の中に駆け巡る。
　たくさんお願いしたいことはあるが、一番はやはり、隣にいる人とのお願いだろうか。
　ウォルターに視線を向けると、音を出さずに、口の動きだけである言葉を伝えて微笑んだ。

「うん、決めた」

　それからいくらか考えて、空を見上げた柚春。
　煌めきの星が２人を祝福するように輝きを見せると、柚春は星に向けて１つ、言葉を伝えた。

　――ありがとう。その一言を。

　これまで頭に浮かんだ願いたい事は全て叶っているし、とても大事な願いははじめの一歩が叶った。
　ならば、願い事ではなく、輝きの星に向けての言葉は感謝の言葉しかないのだ。

「これからも、よろしくね！」

　その言葉は願いでもなんでもなく。
　純粋に、寝子島の空を輝かせる星に向けての友情の言葉だった。

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