いにしえの京を感じながら｜リアクション

いにしえの京を感じながら

　倉前七瀬は、大学で案内がでているのを見て映画村のイベントのことを知った。
「ちょうどこのあいだ平安が舞台の歴史小説を読んだけん、興味があります」
（ウォルターさんを誘って行ってみようかな？）
　という考えが浮かぶ。
（学期末で忙しいでしょうけん、断られるかもしれんけど）
　その時は自分一人でもいいから行ってみたい。
　そんな思いで連絡してみた。
『いいよぉ』
　意外にもOKがもらえ、七瀬は喜び勇んで映画村へと赴いた。

「平安時代の服が着たいのかい？」
　尋ねるウォルター・Bに七瀬は答える。
「それよりもお菓子作り体験がしたいです。平安時代の食べ物ってどんな感じなんですかねぇ？　気になって」
「確かに……せんべいとかどら焼きとかの和菓子って平安って感じはしないよねぇ」
「でしょう？　料理はすごく得意！　……というわけではないので、教えてもらいながら作れるのは助かります。ウォルターさんも一緒に頑張りましょう！」
「七瀬は十分料理得意だと思うけど……え、僕も作るの？」
「僕も一緒じゃけん大丈夫ですよ。美味しいお菓子を作りましょう、えいえいおー！」
「おー……」
　つられて小さく拳を上げるウォルターに微笑みかけると、七瀬はさっそく料理のコーナーへ向かう。

「二種類あるんで両方申し込んでみました。まずは、ふずくから」
　二人はエプロンと三角巾を装備してお菓子作りを始めた。
　まずはあまづら風シロップを作る。
「本物は樹液を煮詰めたものなんですねえ。メイプルシロップみたいです」　
「さすがに樹液から作るんじゃなく砂糖で代用するんだね」
　砂糖を煮詰めると甘い匂いが漂ってきた。
「それから米粉を餅にして、ゆでます」
「いろんな色が作れるんだね。あんこにきな粉、ごまによもぎかぁ」　
　甘葛シロップをかけたら更にこねる。
「ウォルターさん、けっこう上手ですね」
「七瀬は褒め上手だねぇ」
「こねたら、それを筒の中にいれて、固まったら押しだす」
「これなら綺麗な形ができるねぇ」
「どんな味かワクワクします」

「次はからくだものですね。『くだもの』と言いつつ揚げ菓子なのが面白いですよね」
「くだものはお菓子扱いなのかなぁ」
　材料を混ぜて生地を作り、成形する。
「耳たぶの硬さくらい……これってみんな同じ硬さなのかなぁ。七瀬、耳たぶ触っていい？」
「えっ、料理中ですよ……」
「冗談だよぉ」
「……もう。今度ウォルターさんのを触らせてもらいますからね」
　ゆでてさらにこね、形を作って油で揚げて完成。
「……ふむん、もしかしたら僕、小さい頃にこのお菓子食べたことあるかもしれません。すごく見覚えがあります」
「そうなのかぁ。平安時代のお菓子を食べてたなんてうらやましいねぇ」
「その時は平安時代のお菓子だと思って食べてなかったはずですけど。さて、食べ比べてみましょう」

　テーブルにつくと、二人はそれぞれが作ったお菓子を食べ比べてみた。
「もぐもぐ……美味しいです！」
「うん、これは美味しいねぇ」
　珍しいお菓子を味わって満足した七瀬はつぶやく。
「現代の材料で、何百年も昔のお菓子を再現できるなんて感動しました。平安の人たちと僕たちって、そう遠い存在でもないのかもしれませんねぇ」
「七瀬は和歌を詠むのとか苦にしなさそうだしねぇ」
「……どうでしょうねぇ。自分で作るより読む方が好きですが」

　楽しい体験を分かち合えた一日だった。

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。

時代劇のロケや、十二単の着付けや平安のお菓子作り、楽しんでいただけたなら幸いです。
今年は学園祭などでも平安関係のイベントがありそうなので、機会がありましたら挑戦してみるのはいかがでしょうか。

ちなみに時代劇はそこそこ見ていたつもりでいましたが、調べるまで暴れん坊将軍と遠山の金さんがごっちゃになっていたのは内緒です。

それでは、また機会がありましたらご参加お待ちしております。

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