いにしえの京を感じながら｜リアクション

いにしえの京を感じながら

　綾辻綾花は、早川珪とのデート先に映画村を選んだ。
「平安体験のイベントができるって聞いたので十二単着るの楽しみだったんです」
「司書教諭としても体験しておきたいイベントだね」
　珪も興味があるようだ。
「珪さんは直衣が似合いそうですね」
「どうかなあ」
「着替えたら一緒に写真撮りましょう」
　そう勧めて、綾花は珪に直衣の列に並んでもらった。
　自分は十二単の列に並んでそわそわと待つ。

　やっと順番が回ってきた。
「服の上からで大丈夫ですので、腕を少し上げていてください」
　スタッフに着物を着せてもらうと、かなり重かった。
「身が引き締まる思いです」
　鏡を見ると、和風美女が映っていた。
（早く珪さんに見せたいです）
「写真撮りますよ」　
　スタッフが声をかけてくれた。
「待ってください、一緒に撮りたい人がいるんです」
　そう言って珪の元へ向かう。
（いた！）
　直衣姿も凛々しい珪が待っていた。
「珪さん、似合いますか？」
　重さも忘れ急いで珪の傍へ向かった綾花は、あと一歩のところで裾を踏んでしまった。
「あっ！」
　パシャッ。
　そのまま珪のほうに倒れ込み、しっかりと支えられた。
　
「大丈夫？　綾辻さん」
「すみませんっ」
　頬を火照らせ謝る綾花。
「改めて写真撮りますよ」
　スタッフの女性に言われ、写真を撮ってもらった。
（改めて？）
　ちょっと疑問を感じつつ笑顔で珪に言う。
「昔の人は大変ですね……」
「そうだね、重そうだ」

　出来上がった写真を見せてもらい、綾花は驚いた。
「……恥ずかしいです」
　珪の胸に飛び込むその瞬間を写真に撮られていたのだ。
　見つめ合ってドキドキな二人の写真。
「でも意外と良い写真になってます」
「……物語の一シーンのようだね」
「珪さんは思ってた通り、似合っててカッコいいです」
　二人並んで撮ってもらった写真もよく撮れており、どちらもお気に入りの素敵な写真になった。

　私服に戻り、綾花はそっと珪と手をつなぐ。
「人が多くて迷子になりそうですから。珪さん、どこ行きますか？」
「時代劇の撮影もしてるみたいだね」
「人が多くて賑やかですね」
　しばらく一緒に時代劇の撮影を見ていた。
「綾辻さんは普段時代劇なんて見るの？」
「あまり詳しくはないですけど、時々見ますよ」

「良い香りがしますね」
　それから、香りに誘われて『からくだもの』というお菓子作りの体験に参加した。
「くだものというけど、米粉なんですね」
　綾花は、珪と一緒に粉を混ぜたり丸めたりした。
「珪さん、上手ですね」
「綾辻さんもとても上手だよ」
「珪さんと一緒に料理するの楽しいです」

　紙ごと油に入れて揚げると、香ばしい香りが漂ってきた。
「食べるのが楽しみです」
「熱いから気をつけて」
　出来上がったからくだものを、二人は一緒に食べた。
「サクッともちっとしてて、シロップつけてもお塩つけても美味しいです」
「素朴で美味しいね」
「一緒に食べるとさらに美味しいです」
　二人は微笑みあい、映画村デートを満喫した。

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