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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ボディタッチ日和オブスプリング・アンド・ホットスプリング
その出会いを八神 修は、魂の引力と表現した。
「詩的だねぇ、修君」
七夜 あおいは柔らかく笑み首肯した。何であれ彼女と共感共鳴することは修を満たしてくれる。寝子温泉街で鉢合わせたのは偶然で、だからこそ力強い運命の導きを感じて修の心は昂った。
どうやら今日は多くの人々が同じ思いを共有しているようだ。湯気立ち昇る街並みを歩けばそこかしこに家族や恋人、友人同士寄り添い合う姿が見受けられた。
「温泉に入りに来たのか？」
修が尋ねるとあおいは何やら少しばかり頬を赤くした。
「何だろうね、今日は朝から変な気分で。その」
「ああ。分かるよ。どこか肌寒いというか、人肌恋しいというか」
「あ、それだ！」
よりしっくりとくるワードであったか、ぱちんと両手を叩いて彼女は笑みを深くした。
街をそぞろ歩く。引力とは良く言ったもので時折互いの小指が自然と引きつけ合い、触れては離れを幾度か繰り返した。
正直なところを吐露するならば、修は今すぐにでもあおいを抱きしめたい。頬をすり寄せ肩なり背中なりを手のひらでなぞり彼女の描く曲線を確かめたり、あるいは確かめられたりしたい。しかし悲しいかな、神魂の誘うこんな局面にありながら修はどこまでも紳士であったから、それはならぬと鉄の意思で自制する。今ならば彼女も受け入れてくれるような予感がありながらもならぬ。ならぬのである。寝子温泉街の風呂という風呂は本日に限り混浴であるそうで無論心惹かれるものだが、修は心中に血涙を流しながら別の提案を述べた。
「まだ高校生だしな……」
「え？」
「いや。なああおい、足湯はどうだ？ 何か飲みながら入ろう」
「いいね～♪ 行こう行こう」
神魂に心浮かぶ者たちの多くは温泉なり混浴なりを求めたか、足湯に人はまばらだった。靴と靴下を脱ぎ、並んで腰かけ湯に足を浸す。熱すぎずぬるすぎずちょうど良い塩梅だ。爪先から頭頂までじんわりとあたたかさが広がっていくようで、二人揃って思わず深い吐息をもらした。
「は～～～。気持ちいい……」
「あたたまるな」
想いを寄せてやまない彼女と、直接的な触れ合いではあるまい。しかし修の胸はこうして並び足を湯につけ他愛のない話題を巡らせているだけでも満たされた。
「そうだ。ちょっと写真を撮ってもいいか？」
「私の？」
「いや、一緒にさ」
鞄から取り出した丸っこいカメラを見ると、あおいは目を輝かせた。
「あっそれ、最近ちょっと流行ってるっていうやつ！」
「ああ、リバイバルブームというやつだな」
撮影しその場でプリントできる小型のインスタントカメラが大流行したのは二人の生まれる前、随分と昔のことだという。昭和レトロ、平成レトロなどと懐古されるものが返って若者には新しく見えるらしく、修のカメラもそんなものの一つであるそうだ。といって修が購入したのはそのようなミーハー感丸出しな理由ではなく、ガジェットとしての楽しさや面白さに着目し、あおいや友人たちとも分かち合いたいと思ったからだった。
二人でピースサイン。撮影すると小さなカードサイズの写真が排出される。頬を寄せた二人の表情が華やかなその一枚を裏返し、修はペンを走らせた。
「これ。持っててくれ。俺の新しい住所を書いておいた」
「あ、決まったんだ？ ありがと～♪」
以前に、住む場所が決まったら教えてくれと言われていた。写真付きでというのはちょっとした思い付きだが、気に入ってくれたようだ。
足湯に浸かり、近くの露店で買っておいたフルーツスムージーの爽やかさも楽しみながら、話は弾んだ。
「八神家のゲストハウスの一つでね。ずっと使われていないものだから、活用することにしたんだ」
「へえ～。あ、動物たちはどうするの？ ワンちゃん猫ちゃん、いっぱいいるよね」
「ハムとウサギとリスも。もちろん連れていく……んだが、実習が始まると世話するのも難しいから、一匹だけかな。あとのみんなは誰かに世話を頼むことになるな」
「一匹だけ！ それは選ぶの難しいね。ていうか、寂しいね」
「そうだな……でも必要なことだからな」
あおいの新生活も間もなく始まるのだろうが、あれこれと不安は尽きないという。なるべく自炊はしたいが、メニューに悩むこともあるだろう。そんな時はとっておきのレシピを送るよ、と言うと彼女の瞳の帯びる輝きは美しく強まった。
「せっかく旧市街に来たから、和スイーツでも食べていかないか」
「賛成！」
身も心も温まり、足取りも弾む。神魂のもたらした今日という一日が、互いを近づけたのかもしれない。自然と手を繋ぎ、二人は伝統と古式ゆかしい風情が息づく街並みを軽い足取りで歩んでいった。
「詩的だねぇ、修君」
七夜 あおいは柔らかく笑み首肯した。何であれ彼女と共感共鳴することは修を満たしてくれる。寝子温泉街で鉢合わせたのは偶然で、だからこそ力強い運命の導きを感じて修の心は昂った。
どうやら今日は多くの人々が同じ思いを共有しているようだ。湯気立ち昇る街並みを歩けばそこかしこに家族や恋人、友人同士寄り添い合う姿が見受けられた。
「温泉に入りに来たのか？」
修が尋ねるとあおいは何やら少しばかり頬を赤くした。
「何だろうね、今日は朝から変な気分で。その」
「ああ。分かるよ。どこか肌寒いというか、人肌恋しいというか」
「あ、それだ！」
よりしっくりとくるワードであったか、ぱちんと両手を叩いて彼女は笑みを深くした。
街をそぞろ歩く。引力とは良く言ったもので時折互いの小指が自然と引きつけ合い、触れては離れを幾度か繰り返した。
正直なところを吐露するならば、修は今すぐにでもあおいを抱きしめたい。頬をすり寄せ肩なり背中なりを手のひらでなぞり彼女の描く曲線を確かめたり、あるいは確かめられたりしたい。しかし悲しいかな、神魂の誘うこんな局面にありながら修はどこまでも紳士であったから、それはならぬと鉄の意思で自制する。今ならば彼女も受け入れてくれるような予感がありながらもならぬ。ならぬのである。寝子温泉街の風呂という風呂は本日に限り混浴であるそうで無論心惹かれるものだが、修は心中に血涙を流しながら別の提案を述べた。
「まだ高校生だしな……」
「え？」
「いや。なああおい、足湯はどうだ？ 何か飲みながら入ろう」
「いいね～♪ 行こう行こう」
神魂に心浮かぶ者たちの多くは温泉なり混浴なりを求めたか、足湯に人はまばらだった。靴と靴下を脱ぎ、並んで腰かけ湯に足を浸す。熱すぎずぬるすぎずちょうど良い塩梅だ。爪先から頭頂までじんわりとあたたかさが広がっていくようで、二人揃って思わず深い吐息をもらした。
「は～～～。気持ちいい……」
「あたたまるな」
想いを寄せてやまない彼女と、直接的な触れ合いではあるまい。しかし修の胸はこうして並び足を湯につけ他愛のない話題を巡らせているだけでも満たされた。
「そうだ。ちょっと写真を撮ってもいいか？」
「私の？」
「いや、一緒にさ」
鞄から取り出した丸っこいカメラを見ると、あおいは目を輝かせた。
「あっそれ、最近ちょっと流行ってるっていうやつ！」
「ああ、リバイバルブームというやつだな」
撮影しその場でプリントできる小型のインスタントカメラが大流行したのは二人の生まれる前、随分と昔のことだという。昭和レトロ、平成レトロなどと懐古されるものが返って若者には新しく見えるらしく、修のカメラもそんなものの一つであるそうだ。といって修が購入したのはそのようなミーハー感丸出しな理由ではなく、ガジェットとしての楽しさや面白さに着目し、あおいや友人たちとも分かち合いたいと思ったからだった。
二人でピースサイン。撮影すると小さなカードサイズの写真が排出される。頬を寄せた二人の表情が華やかなその一枚を裏返し、修はペンを走らせた。
「これ。持っててくれ。俺の新しい住所を書いておいた」
「あ、決まったんだ？ ありがと～♪」
以前に、住む場所が決まったら教えてくれと言われていた。写真付きでというのはちょっとした思い付きだが、気に入ってくれたようだ。
足湯に浸かり、近くの露店で買っておいたフルーツスムージーの爽やかさも楽しみながら、話は弾んだ。
「八神家のゲストハウスの一つでね。ずっと使われていないものだから、活用することにしたんだ」
「へえ～。あ、動物たちはどうするの？ ワンちゃん猫ちゃん、いっぱいいるよね」
「ハムとウサギとリスも。もちろん連れていく……んだが、実習が始まると世話するのも難しいから、一匹だけかな。あとのみんなは誰かに世話を頼むことになるな」
「一匹だけ！ それは選ぶの難しいね。ていうか、寂しいね」
「そうだな……でも必要なことだからな」
あおいの新生活も間もなく始まるのだろうが、あれこれと不安は尽きないという。なるべく自炊はしたいが、メニューに悩むこともあるだろう。そんな時はとっておきのレシピを送るよ、と言うと彼女の瞳の帯びる輝きは美しく強まった。
「せっかく旧市街に来たから、和スイーツでも食べていかないか」
「賛成！」
身も心も温まり、足取りも弾む。神魂のもたらした今日という一日が、互いを近づけたのかもしれない。自然と手を繋ぎ、二人は伝統と古式ゆかしい風情が息づく街並みを軽い足取りで歩んでいった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2024年06月06日
- 参加申し込みの期限
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- 2024年06月13日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2024年06月13日 11時00分
