【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪｜リアクション

【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪

〇突然の指名

　パフォーマンスが披露されていく中。
（茉奈、次は指名枠よ）
　桜に耳打ちされ、茉奈は答えた。
（任せて！　準備は万全よ）
　マイクを握り、高らかに宣言する。
「さて次は、卒業生からパフォーマンスをお願いします。イベントの司会といえばこの方。青山絢さん！」

「えっ？！」
　突然の指名に驚く絢。
　しかもそれだけではありませんでした。
「青山さんと言えば、バニーですよね！　ぜひバニースーツ着用でお願いします♪　控室に用意してあります」
「ええっ？！」
　拍手と歓声が沸き起こっています。
　気弱な絢にはとても断れない雰囲気です。
　半ば逃げるように控室へ向かい、ご丁寧にパフォーマンス用のアイテムと一緒に用意されていたバニースーツに着替えるのでした。

（最後までこの格好なのね……）
　思い返せば高校2年の時、『Ｂ☆Ｉトリエンナーレ』の司会進行役で前理事長によりこの格好をさせられて以来、今に至るまで校内イベントの司会でバニースーツでこなすようになり、いつの間にか「バニーと言えば青山さん」で通るまでになっていたのでした。
　その後女優デビューした絢は、映画でもバニーガールを演じたので、評価は不動のものとなったのでした。
（今日はそんなつもりじゃなかったんだけど……）
　恥ずかしい、と思いはしましたが。
　それでも着用した瞬間に、絢の中でカチッとスイッチが入りました。
　鏡を見ればそこにいたのは、もう気弱な少女ではなく、妖艶で物怖じしない女でした。
　
（卒業生を送る会。高校生だけのイベントかと思ったら、地域にも開かれたイベントなのね）
　絢の従姉にして最愛の恋人である水谷真優理は、少し遅れて講堂につきました。

「パフォーマンスタイムですよ、どうぞ」
　実行委員に言われ講堂に入った真優理は、後ろのほうでそっと見守るつもりでした。
（ええと、絢ちゃんは……）　
　卒業生席を見回していたのですが。
　スポットライトと共に壇上に登場したのは。
「絢ちゃん？！」
　まさかのバニー姿で登場した絢に、つい驚きの声を上げてしまいました。
　絢のバニー姿を見るのは今回が初めてではありません。
（でもこの前の寝子祭でバニー姿は見納めだと思っていたわ……）
　堂々とステージに上がる絢に、在校生も卒業生も拍手喝采です。
　絢の手には二丁の拳銃がありました。

（すごい、ガン＝カタね！）
　気が付けば真優理はスマホを取り出し、ベストポジションに移動してパシャパシャ撮影しまくっていました。
　目の前で演じられる妖艶かつダイナミックなキレッキレのアクションにすっかり興奮してしまったのです。
（一番カッコよくなるように写さなきゃ。それに今度こそ完全に見納めになるだろうし）

「カッコいい！」
　野々ののこが大喜びで拍手を送ります。
「すごいパフォーマンスだね。特撮みたいだ」
　見とれていた英二も、心から感心して拍手するのでした。　

　曲の終わりにポーズを決めた絢に、万雷の拍手が降り注ぎ。
　拍手の中を絢は悠然と立ち去ったのでした。