【期末テスト】赤点？留年？？春雷、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？留年？？春雷、四日間の死線＜物語編＞

　篠原翠響は１日目から体操部で着用するレオタード姿で教室へ入った。
「うう、停電？　なんか寒」
「おはよう、室内温度１月並みらしいよ」
　近くのクラスメートがそう、声をかけてきた。
「え」
　翠響は思わず声を出し、
「外と変わらないんじゃ」
「風のない野外だねー」
　翠響はクラスメートの言葉にぶるるっと体を震わせた。
　専用のシューズだと足も寒い。
「やっぱり上履きを……でもレオタードにいつもの靴っていうのもおかしいし」
　教室を見渡すと、白鳥のバレリーナ風私服の、クラスメートの足元はしっかりとトゥシューズである。
「やっぱりそうよね。……何がそうなの？」
　いちいち混乱するのは、この格好で試験を受けるのが非常に恥ずかしいからである。
　雷も鳴り続いているし、集中できるだろうか。

　そんな調子で３日間。
　そして、最終日。最後の試験開始まで5分を切ったことを確認し、大きく深呼吸。
「恥ずかしさ抜けないけど」
　制服登校が徐々に戻りつつある周囲だが、ここまで来たら気合をいれてレオタードである。
　やがて、
「では初め！」
　担当の教員の合図で、答案用紙を埋めていく。
（集中。感覚を研ぎ澄ますイメージを）
　自分でも分かる。いわゆるゾーンに入った。集中力がピークに達する。
　集中力が高いので一度没入したらあとはテストが終わるまで集中力が持続する。一切気が散らないので本当に助かる。
　気づけば答案用紙が埋まっていた。
（見直しする時間は……ありそうね）
　いい感じにレオタードが緊張感と張りつめた空気を演出してくれている気がする。
（気がする？）
　余った時間はどうするか。考えることにする。