【スキー＆スノボ合宿】銀色のキャンパスへ、描けシュプール！｜リアクション

【スキー＆スノボ合宿】銀色のキャンパスへ、描けシュプール！

「……むむむ……」

　稲積柚春は悩んでいた。非常に悩んでいた。
　というのも、今日は学校全体でのスキー合宿。故にウォルター・Bとも会うことがあるのだが、そんな彼は今は学校の先生として『皆の先生』をやっている。
　そのため『ワット』としての顔は表に出ることはなく、例え隣にいたとしても一緒に楽しむことは難しい。

「……はあ」

　最初は電話やメールをしてみようかとも思っていた。
　けれど今は仕事中だから、きっと迷惑になるだろうと思ってそれはやめた。

　じゃあ、どうしたら彼と一緒にいられるだろうか？　と考えた末に目についたのが……宝探し。
　猫耳ヘアバンドを見つければ先生が写真を撮ってくれるとのことなので、それでウォルター先生に写真を撮ってもらえばいいんだ！　と気づいた。

「ええと、『王冠かぶったしろくまさん、猫さんとお荷物一緒に運んだよ』……か。確か向こうの方に……」

　王冠を被ったしろくまに心当たりがあった柚春は記憶を頼りにホテルを歩く。
　道中、何度かウォルター先生を見つけては挨拶をしたりして、先生と生徒のやり取りを交わした。
　今、宝探しをしている。その事もちゃんと伝えて。

　するとウォルターは何かを閃いたようで、柚春にある提案を持ちかける。
　ヒントの内容を教えてもらったと同時、先生である立場だからこそ閃いた一つの提案。

「ああ、そのヒントもしかしたら写真撮影が必要かもしれないね？　僕で良ければ、写真撮ってあげようか」
「えっ」

　パチン、とウィンクを見せたウォルター。
　どうやらウォルターは先生と生徒という立場を保ちつつ、一緒にいる方法を考えてくれたようだ。
　『ウォルター先生』でありながら、『ワット』として隣にいてあげる。それが今出来る、彼なりの最善策だった。

「お、お願いします！」
「じゃあ、まずは王冠をかぶったしろくまさんを探さないとねぇ。ええと、どこにあったんだったっけ？」
「こっち、です！」

　できるだけ、周りから見たら『先生と生徒』になるように。
　でも、２人の時には『柚春とワット』になるように。

　密かに楽しむ２人の姿がホテルで見受けられた。