君も私もアイドルに！？｜リアクション

君も私もアイドルに！？

◆ライブ開始

　寝子電スタジアムのステージでは、照明などの最終確認が行われていた。
　観客席もすっかりいっぱいになっている。そこに開幕を知らせる大きな音が響く。一気に沸き立つ観客。ステージに最初に現れたのはアイ活研のメンバーたちだ。

「スタジアムに集まったみなさんこんにちはー！　寝子島高校アイドル活動研究部でーす！　今日はみんなで一緒に盛り上がりましょう！」

　あいお達はあくまで研究部なので、厳密にはアイドルではない。でもそんなことを全く気にさせない勢いを見せる。

「１曲目は去年大ヒットしたアイドルグループのあの曲です！」

　曲が流れると、観客たちのテンションが一気にあがる。

「さあ飛び入り参加もOK！　アイドルやってみたいって皆様、遠慮せずにステージへ上がってきてください！　大丈夫、メンバーがサポートしますよ」

　ステージの輝きに魅せられて、数人がステージに上がる。そこにアイドルになった相原まゆ先生も参戦した。

「あ、寝子高の相原まゆ先生が来てくれました！　さすが体育科の先生、ダンスがキレッキレです！」

　ステージにやってきた他の人たちもメンバーのサポートを受けて、なんとかダンスに参加している。研究部のメンバーなだけあって教えるのもうまい。

「次は最近話題のあのCMソング！　振り付けも簡単なので何となくでも大丈夫、私たちを見て一緒に踊ってください！」

　次の曲が流れると、あいお達が手本となる振付をしっかりと観客に見せる。

「それではみなさんご一緒に！」

　サビ部分では会場が一体になり、観客とステージが盛り上がる。そして曲が終わると、いちど深く頭を下げた。アイドル活動研究部の出番はこれで終了となる。

「ありがとうございましたー！　アイ活研はいつでも新入部員募集中でーす！」

　汗だくになりながらも、あいお達は最後まで笑顔を絶やさなかった。続けて久保田美和先生や黒崎俊介先生もパフォーマンスを披露する。
　そしてまゆらの番がやってきた。
　衣装はレンタル品から動きやすくて、色が好みのものを選んだ。ステージにあがると、観客たちが自分の事をみているのがはっきり分かる。大きく息を吸って、第一声を放つ。

「落合まゆらです！　今日は楽しんでいきましょう！」

　持ち歌をさっそく披露するまゆら。とにかく全力で駆け抜けることだけは決めていた。

（簡素な振付でも構わない。いま出せる全力を……！）

　熱意は会場全体に伝播して、さらに観客が盛り上がる。そして３曲歌い切ったところで、まゆらの出番は終わった。肩で息をしながら、最後の一言を絞り出した。

「ありがとうございました！」

　まゆらに惜しみない拍手と声援が送られた。
　そうして何人もアイドルが登場し、いよいよ晴月の番がやってきた。

「晴月、その衣装似合ってるぞ」

　ラッセルは白い花のような、ふんわりとしたアイドル衣装を用意した。かなり奮発したが、そのことは心に留めておく。衣装を身にまとった晴月は気分の高揚と極度の緊張を感じていた。

「落ち着け！　頑張れ晴月！　今日までやってきたんだ……！」
「うん」
「ほら、皆に大好きを届けるように！　だろ？」
「……うん！」

　ラッセルが晴月の小さな背を押すと、彼女はステージに駆けていった。
　熱気と歓声の波が肌に伝わる。注目のされ方も路上ライブの比ではない。ちらりと舞台袖のラッセルを見る。彼は力強く頷いた。意を決した晴月は観客をまっすぐ見つめ、渾身の歌を披露した。

「ありがとうございました！」

　晴月の言葉に観客は拍手で応えた。

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