爆裂クッキングでファイヤー！！｜リアクション

爆裂クッキングでファイヤー！！

　綾辻綾花は、右手の暖かさを再認識しながら、力を込めた。
「ん？　どうかしたかい？」
「なんでもないです。寒いのに、なんだか温かいなって」
「お互いカイロ代わりだな」
　冗談っぽく言う早川珪先生と笑い合う。
　と、賑やかな声が聞こえてきた。少し向こうに人だかりができていた。見ると、少し高くなっている舞台には、
「ゆかり先生！」
　思わず、声を出してしまった。
「あれが料理番組の？」
「若手料理家のゆかり先生です。今日もやっぱり爆発するのかな？　ってハラハラしちゃいます」
「爆発？」
　目を瞬かせる早川先生。
　綾花はくすっと笑った。
「夕方の料理番組なんですけど、ゆかり先生は爆発するので有名なんですよ。でもちゃんと完成して美味しいって凄いですよね」
「料理の方法は変わってるけど、とにかく腕は確かってことか？」
「はい！」
　早川先生も興味が出てきたらしいので、二人で見学することにした。
「手際が良いな。見ていて気持ちいい」
　早川先生は感心しているよう。無駄な動きは一切なく、工程が流れるようだ。
「やっぱり、料理が出来る女の子は、す、好きですか？」
「女の子に限らず、料理できるのは尊敬するね」
「卒業したら。卒業したらですよ？　珪さんに料理作る機会も多くなると思うんです。参考にしたいですけど爆発は困りますね」
「卒業したら、か。先生としては、家庭科の授業の練習をしてる綾辻さんを見たいし、味見もしたいけどね」
「！　そ、それは」
　手料理を食べたいと言ってくれてるのだろうか。
「じゃあ、今度練習に付き合ってもらえますか？」
「もちろん」
　と、舞台の方でボンッと音がした。
「ひゃっ」
　いきなりの破裂音だったので、バランスを崩して寄りかかってしまった。とっさに肩を支えられる。
「あ、ありがとうございます」
「いや、凄いな」
　早川先生は目を丸くしていた。部隊の上では煙が上がっている。その中から出てきたゆかり先生はカレー鍋を持っていて、
「完成ですわ！」
　高らかに宣言した。舞台上で盛りつけたカレーは美味しそうで、それは風の流れからも分かった。
「試食できるみたいですね」
　絶品カレーを食べる早川先生の様子に、綾花は決意する。
（レシピ覚えて帰らなくちゃ）

このページにイラストを設定する