爆裂クッキングでファイヤー！！｜リアクション

爆裂クッキングでファイヤー！！

　梓智依子は娘の楓と共にシーサイドタウン駅のｍｉａｏに出かけていた。
「人がいっぱーい」
　年末の街は賑やかで、特別感がある。
「あれ、何やってるんだろ？」
　向こうの方が非常に賑やかだ。手を繋いだ楓が行きたそうにしているが、
「買い物が終ったらね」
「うん！」
　ｍｉａｏへと入ろうとした時、
「はいはーい、ゆかり先生の爆裂！　ファイヤークッキングです。可愛い親子発見。参加しませんかー？」
「今から買い物を」
「わあ、サンマさんとマンボウさんだー」
　そこで思いだした。楓はファイヤークッキングの視聴者だったのだ。
「ねえ、ママ」
　わくわくしたようにこちらを見上げてくる楓に、智依子は苦笑を浮かべた。
「わかったわ」
　楓にとって、良い思い出になるだろう。
「さあさあ、可愛い娘ちゃんもお綺麗なママさんもこちらへどうぞ」
　案内されたキッチンにて、ゆかり先生とご対面。
「すごーい、すごい！　ゆかり先生だ。えっと、初めまして」
　きちんと挨拶できたことに、智依子は楓の頭を撫でつつ、
「よろしくお願いします」
「こちらこそ～。じゃあ、食材を切ってくださる？」
　貸してもらったエプロンをつけて、まな板の前へ。
「ママ、わたしもやりたい」
「ん？」
　さすがに刃物を持たせるわけにはいかないが。
「ママが切るから、切ったものをボールに入れて、ゆかり先生に渡してくれる？」
「うん！」
「先にお肉を炒めておきますわ」
　ゆかり先生は深めのに油を引いて、豚肉を炒め始めた。
「じゃがいも、にんじん、たまねぎっと」
　玉ねぎに包丁を入れた瞬間、

　ボンッ！

　空気が弾ける音がした。
「！？」
　智依子が振り返ると、ゆかり先生の頭上に豚肉が舞っていた。
「ふふ、良いですわ！　お肉が嬉しそうに飛んでいるかのよう！」
　実際に飛んでいる。
「楓！」
　楓を引き寄せ、ボールをゆかり先生の頭上へ。炒め途中の豚肉は吸い込まれるようにボールの中へ。
「ふう」
　どうにか肉の雨から楓を守れたようだ。
　炒めることに全力を尽くしているゆかり先生、そっとフライパンへと肉を戻し、事なきを得たのだが。
　切り終わった野菜を入れた途端、盛大に爆発。
「わあ！　テレビと同じー」
　喜ぶ楓。
「同じ！？」
　智依子は耳を疑った。本当に料理番組なのだろうか、と。
「カレーですから、活きが良い方が良いでしょう？」
「先生、人参が単独で爆発しました」
「これは……いつもより美味しく出来る予感ですわ」
　爆発の連続、野菜が同時に爆発した時にはどうしようかと思ったが、カレールウを入れて煮込み始めること比較的おとなしくなったのだった。
「はあはあ」
「凄いね、ゆかり先生」
「え、ええ」
　楓が喜んでいるのでよしとしようと。
　数十分後。
「さあ、煮込まれてきましたわね。そちらはサラダ、出来まして？」
　煮込み時間を使って、智依子がサラダを作ることになったのだが。
「はい、なんとか」
「ゆかり先生、わたしがレタス千切ったの」
「あら、偉いですわ」
　智依子はゆかり先生に味見用の小皿を渡す。
「どれどれ」
　レタスときゅうり、そしてトマトのサラダだ。
「あら、美味しいですわ」
　智依子と楓は顔を見合わせ、笑い合う。
「このドレッシングは手作りですわね？」
「ネットのお料理サイトの受け売りですけど」
「それでも良い感じですわ！」
　憧れのゆかり先生に褒められて、楓は嬉しそうだった。それだけでも、出演した甲斐があった。
　もちろん、カレーも絶品だった。

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