爆裂クッキングでファイヤー！！｜リアクション

爆裂クッキングでファイヤー！！

　若手料理家、ゆかり先生の番組生中継。よく見る番組だったので稲積柚春はウォルター・Bと共に見に来たのだが、その途端さんまさん、マンボウさん達に半ば拉致され、ゆかり先生と並ぶ舞台に上げられてしまった。
「へぇ、料理番組ね〜。面白そうだねぇ」
「う、うん」
　そこで柚春ははっとする。
　舞台上を写すカメラは全国放送もしくは島内放送だろう。
（ど、どうしよう）
　と、ウォルターに耳打ちされて、はっとした。
「ご参加ありがとうございます、ですわ！　わたくしの調理補助も良いですけど、お二人で作って見ませんか？　食材はたくさんありますのよ」
「おお、新鮮な魚介類もあるんだねぇ」
　弾むような声に焦る。
「ウォルター先生！　今回はプロのゆかり先生にお任せして、サポートに回ろ」
　先生呼びに、ゆかり先生が目をキラキラさせた。
「学校の先生と教え子さんでしたか？」
「はい、高校のです。たまたまそこで会って」
「そうだったのですね！　お二人でわたくしのサポートをして下さるのですね」
「はい」
　このやり取りも上手くカメラに写った。とりあえず、誤魔化せるだろう。ウォルターの案ではあるのだが。
「では、調味料を計ってもらえますか？」
「計る？　ゆかり先生ほどの腕前なら感覚じゃないんですかぁ？」
「あー、ゆかり先生！」
　柚春はウォルターの前に立った。
「調味料は私がやります！　うちの先生には……あ、写真を撮るためのテーブルセッティングをお願いしませんか？　ウォルター先生は由緒正しい家柄で、そういうことに詳しいんです」
　ゆかり先生は目を瞬かせる。
「セッティングですの？　それはうちのスタッフが」
「是非、お願いします」
「柚春？　調味料は僕が適当に計っておくから」
　柚春は小声になる。
「ワットには、テーブルセッティングのほうが絶対良いから！　メアリさんもそういうことをやらせたら、センスの塊だって言ってたし、僕も楽しみにしてるよ」
　やや早口でまくしたてる。
（サポートしながら、消し炭になるかもしれないし）
「ううーん、そうかぁ」
　ウォルターをテーブルセッティング係に任命しつつ、柚春は調味料を計り、玉ねぎなどの具材を切って行く。
　ゆかり先生はそれらを鍋に入れ、炒め始めた。
「手際良いねぇ」
　ウォルターが感心したように言う。
「ゆかり先生、綺麗な調理スタイルも人気だからね」
　と、鍋の中身がボンッと弾けた。
「！？」
　爆発が、花火のように数回鳴る。
「わわっとっ」
　ゆかり先生は、慌てて鍋を動かし、飛散る具材をキャッチしてみせた。しかし、水を入れたり、かき混ぜるたびに迸る煮込み汁、躍る。最終的に、具だくさんのシーフードカレーが完成したのだった。
　一部始終を見ていたウォルターは、
「うん、僕でも出来そうだね」
（ま、まずい）
　自信を持たれるわけには行かない。
「ワット？　ゆかり先生はあの爆発を計算で起こしてるの。時間も計ってるし、飛散る煮込み汁の重さも把握してるから」
「そ、それは凄いねぇ。料理は、奥深い。僕も精進しないと柚春に美味しいものを食べさせてあげられないからね」
「え」
　ウォルターの手が柚春の頭を撫でる。
「いつか上手くできたら、メアリと3人で、食べよう」
「う、うん」
　照れた柚春が視線をそらす。
　そんなことをしていると、遠くで手を振っている人物がいることに気づいた。
　ラッセルと晴月だ。どうやら、見ていたらしい。
　２人の笑顔に張り詰めていた緊張の糸が切れた。この後、ダブルデートをするのも良いな、なんて。
（お疲れ様、ワット）

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