海と夏と謎の街｜リアクション

海と夏と謎の街

　豪とラッセルは顔を見合わせた。水の引いた街にて。屋台を出していた男性に話を聞いたのだが。
「神様の使い？」
「まあ、攻撃してくるから信じられないかもしれないがな」
　水没していた街にうろついていた透明な魚。体当たりされる直前で街の水が引いて住人達が現れ、あっという間に賑やかな雑踏に早変わりした。
「じゃあ、やり返したらまずいんですか？」
　ラッセルが恐る恐る聞くと、男性はがははと笑い、
「神の使いとは言え、攻撃されたらそりゃ反撃しないとな！　怪我をするし。それに」
　男性は顎に手を当てた。
「この街がこうなってるからこそ、あいつらが暴れてるような気がするんだ」
「そう、なんですか？」
「魚が攻撃的なのは水没させたやつに怒ってるってことか」
「街にある神社から生み出されてるから、そっちへ行ってみると良い。俺ら住民は水没すると消えちまうからな。もう戻って来られないかもしれないと毎日びくびくだ」
「そういえばいつからこうなったんですか？　街が水没するって」
「ああ、半年くらい前だったなあ。街の住人の記憶が時々途切れるようになったんだ。そういえばその頃やってきた坊さんが教えてくれたんだ。この街の状況をな」
　それは手がかりなのではないだろうか。

　水が引いた街は人が行き交い、賑やかな音や声が空気を揺らしていた。
「お嬢さん達、他所から来た人？　ほら、フルーツのミックス生ジュースなんてどう？」
　水着姿だからか、観光でもしていると思われたらしい。
「おばちゃん、サービスしちゃうよ！」
　あっという間にジューサーでミックスされたフルーツジュースを手渡された。戸惑いながら飲んでみると、中々美味だった。
　それを飲みながら聞き込みをすることにした。
「あの、街が水没することについてなんですけど」
　紫が切り出すと、女性は眉を寄せた。
「あーそれねー。うちらは記憶が途切れちゃうからねぇ。このまま消えちまうんじゃないかって不安になるよ」
「原因に心当たりは？」
「うーん。実はこの街に来たお坊さんが水没してることを教えてくれたんだけどねぇ。妙なことを言ってて」
「妙なこと！？」
　蒼が体を乗り出す。
「あれは何故神社なんでしょうか？　って聞いて来たのさ」
　蒼と紫は顔を見合わせた。
「神社の確認？」
「行って見た方が良さそうね。水没する前に近づいておかないと厄介かも」
　蒼は頷いてから、はっとした。
「そういえばそのお坊さんはどこにいるんですか？」
「ああ、他の寺を探してみますと言って、街を出たようだよ」
　紫は考え込んでいた。
「お寺、お坊さんだからお寺を探しているのよね。だったらこの街には」
「お姉ちゃん！」
　足元に水が満ち始めた。
「急がないと」
「ええ」
「あ、ジュースご馳走様でした！」
　神社がある方向へ駆けだした。

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