月夜の夜祭り、鬼ごっこ｜リアクション

月夜の夜祭り、鬼ごっこ

　莉鳥は鬼の子を追いかけて、人混みを分けるように駆けていた。恐らく人間ではない祭り客達。
「私と足の速さが同じみたいね」
　この速度だと絶対に追いつかれない。あちらは分からないが、莉鳥のスタミナ切れが先だろうか。
「はぁはぁ」
　丁度見失ったところで、足を止めた。
（何かないかしら。対策しないと）
　あたりを見回していると、
「そこの鬼の嬢ちゃん」
　声をかけてきたのはわたあめ屋の店主だった。
「鬼っ子はただなんだ。ほれ、持っていきな！」
　渡されたのは、薄ピンクのわたあめだった。
「あ、ありがとうございます……」
　ほんのり甘い匂い。どこか懐かしい香りのそれを口へと運ぶ。
「ん……」
　優しい甘さが口全体に広がって、体が妙に軽くなったようだ。
「え」
　自分の背中に、薄ピンクの翼が広がり、すぐに消えた。
「！」
　すると自分の意思で、体がふわっと浮かんだ。
　どうやらわたあめの効果のようだ。
（これなら捕まえられるかも）
　と、その時。
「おっと！？　うう、操作難しいなー」
　目の前に現れたのは、龍樹だった。瞬間移動でもしてきたかのような動きである。
「んん？　あれ、もしかして……お姉さんも鬼の子探してんの？」
　明らかに祭り客とは違う。幻ではなく、生きた人間の気配がする。
「あなたも？」
「うん！　捕まえないと帰れないっぽいからさ、協力しない？」
　悪くない提案だ。

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