みんなでおにごっこin寝子電スタジアム！｜リアクション

みんなでおにごっこin寝子電スタジアム！

＞序：おにごっこイベント、はじまるよ！

　『バンビーナ寝子島』のファン感謝祭……そのイベントの１つとして、鬼ごっこ大会が開かれる。鬼を担当するのは現役選手５人である。
　ステージ上では、監督と中沢リッカルドが今回の鬼を務める５人の選手の紹介をしている。参加者たちは、皆楽しそうに話を聞いているようだ。
　町長秘書である三折部朝衣は、その様子を見ながら小さくため息を吐いた。
（この後、さっと引いてお偉いさんと話しながらイベントの様子を見物……なんてしないわよね、町長。むしろ自分からイベントに参加するんじゃないかしら？）
　朝衣はふと自分のいで立ちを見る。今日は公務ということもあり、スーツ姿だ。まぁ、動きやすさ重視でパンツスーツではあるが……。
　リッカルドは、こういったイベントは楽しむタイプだ。朝衣はイベントに参加することも考慮し、スニーカーを履いていた。
　そこにスタッフが「リッカルド町長も参加だそうですが……」と声をかけてくる。朝衣の勘は当たっていた。
「秘書のあたしも参加しないわけにはいかないわよね」
　彼女はそう言いながら、かるくストレッチを始める。

　一方、ステージの前。
　綾辻綾花と朝永真深は選手の説明を聞きながらルールを確認していた。
　綾花の傍らには恋人の早川珪が、真深の傍らには親友の手島ゆかりがいて、周囲の盛り上がりに飲まれながらもわくわくしているようだった。
　４人で色々話しながら選手紹介を来ている時。綾花はゆかりの服装が何か気づいた。
「もしかして、それは『バンビーナ寝子島』のユニフォームですか？」
　綾花が問えば、ゆかりが笑顔で頷く。
「ゆかりは確かファンなんだっけ？」
「そうなんだ。だから、今日はとっても楽しみだったの」
　真深の問いに、ゆかりは楽し気に答える。
　彼女曰く、ステージ上にいる選手の一人を特に推しているらしい。ちょうどそこでは逃げ切った人への豪華景品について話題に上がっていた。
「一体何だろうね……」
「何でしょうね……」
　ふと珪が呟き、真深は首をひねる。真深自身は正直なところ、大して期待してない。傍らのゆかりは「もしかすると観戦チケット？　それとも好きな選手のサインとかもらえる？」とはしゃいでいるようだが……。
「選手の皆さんも知らないみたいですし、何か特別な物かもしれませんね」
　綾花はステージ上の人々の様子からそう考えた。

　ルール説明が終わり、いよいよスタートの時間が迫る。舞台袖に戻ったリッカルドは革靴から動きやすそうなランニングシューズに履き替え、楽し気に「さぁ、スタートの場所に行きましょうか！」と朝衣に話しかける。
「そういうと思って、私もスニーカーで来ていたんです」
「É magnifico！　朝衣君も、このイベントを一緒に楽しみましょう！」
「……はいっ！」
　妙にウキウキとした様子のリッカルドだが、朝衣自身は「町長はすぐに捕まるのでは……」と考えている。第一に鬼役は現役のサッカー選手である。その上、逃げられる場所も決まっている。
（倉庫や売店などヘは逃げられない。そうなると隠れる場所なんて実質的にないのと同様だわ。……終了時間までにいかに体力を温存しつつ、鬼役の選手の追跡を逃れるか、にかかっている）
　冷静に考える朝衣だが、鬼役を務める彼女達相手にどれだけ逃げ切れるだろうか？　彼女は無意識に再び軽くストレッチをすると、同じように体をほぐし、スーツのジャケットをスタッフに預けて「今日はがんばりますよー！」と行くリッカルドの後を追った。

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