桜台農園で、わくわく♪栗拾い｜リアクション

桜台農園で、わくわく♪栗拾い

　梓智依子は、娘の楓と祖父母と一緒に桜台農園の栗拾いにやって来ました。
（ここへは去年、楓を連れてやってきたけど、私は子供の頃に何度か訪れたことがあるわ）
　子供のころ、何も考えずにイガグリを手に取って思いっきり手を怪我したという思い出がありました。
（あの時は本当に痛かったな。ちょうど楓と同じ年だったっけ？）
「ママ、どうしたの？　はやくいこう！」　
　思い出にふける智依子を楓がひっぱりました。
「待って、準備をしましょう」
　楓にはしっかりした靴をはかせ手袋をさせて、怪我をしないように支度しました。
（あの時の私みたいに痛い目に遭わせたくないしね）

「じゅんびおっけー、いこう！　あっ、くりだ！」　
　これで安心、と思ったのは甘かったとすぐに智依子は思い知らされました。
「待って楓、走らないで！」
　何にでも興味を持つ楓は、とにかく目についたもので興味を引きそうなものに出会うとすぐに突撃したりしてしまうのです。
「装備以上に気をつけなきゃならないのは、楓の好奇心の強さだったわね……」
　この前の大雨の時も大きな水たまりに突撃しようとしたりで、とても大変でした。
（体力が有り余らないよう思い切り遊ばせてあげたいのは山々だけど……）　
　走り出す楓を追いかけるのは祖父母に頼むわけにもいかず、智依子が走り回る羽目になるのでした。
「トゲトゲが痛いから、触ったり踏んだりしないでね」
「はーい」
　追いかけて言い聞かせると、いい返事が返ってきましたが、油断できません。
　興味のあるものを見つけたが最後そんなことは忘れてしまうのですから。

　手をつないで楓を制御しつつ、小一時間ほど栗拾いをして、結構な数が集まりました。
「いっぱいひろえたね！」
「おおすごいな楓、おじいちゃんも頑張ったぞ」
（しばらくは栗祭りね）
　そう思いながら、たくさん集めた栗を得意げに見せる祖父母に智依子は笑みを向けました。
「カフェでゆでてもらえるそうだから、ここで少し食べていきましょうか」

「まだかなー、たのしみだね」
　カフェで席について、栗が茹であがるのを待つ楓は、目をきらきらさせていました。
「あれなに？　おいしそう！」
　モンブランを食べたそうな楓の様子を見て、智依子は慌てて厨房のほうに注意を向けさせます。
「見て、栗ができたみたいよ」
「わあ！」
　うまくモンブランのことを忘れてくれたようで、智依子はほっとします。
（楓が甘いモンブランを先に食べたりしたら、茹で栗はおなかいっぱいで入らないわ）
「いただきまーす！」
「待って、茹でたては熱いから、フーフーしてね」
　栗はしっかり甘みが出ていておいしく、みんな満足しました。
「おいしい！」
　楓のフーフー言いながら栗を食べる様子が可愛くて、智依子はスマホで何枚も写真を撮ったのでした。

このページにイラストを設定する