桜台農園で、わくわく♪栗拾い｜リアクション

桜台農園で、わくわく♪栗拾い

「桜台農園で栗拾い放題ですって？」
　そんな話を聞きつけた、おいしいもの大好きな寝子高２年の楡宮遠海は、じっとしてはいられませんでした。
　秋の味覚の一つである栗を満喫すべく、朝早くから農園へ向かった……のですが。
「あれ……ここはどこ？」
　規格外の食欲魔人である遠海は、規格外の方向音痴でもあったのでした。
　そんなわけであっさり迷子になり、あっちこっちへうろうろと迷いまくりです。
「行けども行けどもたどり着かないわ、困ったわね……」

「やった、見つけたわ！」
　結局桜台農園に到着したのは、昼過ぎでした。
（さすがにこれはマズいでしょ……）
　と自分でも思ういますが、それでも農園に到着できた喜びのほうが勝ちました。
「ここまでくれば、あとは栗を拾って食べるだけよ！」
　レンタルの装備で身を固め準備はＯＫ。
　遅れた分は張り切って取り戻そう！　と思った遠海ですが。
「あれ……農園ってけっこう広いのね」
　そのうえ栗林は見通しが悪いことに気づき、新たな心配が生まれました。
（ここで迷って帰れなくなったら……上から降ってくるいが栗に、足元に落ちている栗の中迷うとか、どんな罰ゲーム？）
　真夜中に栗林の中をさまよう自分を想像すると、ちょっと身震いしてしまいました。
（なるべく人のいるところから近い場所を中心に拾うわ）
　何より迷わないことを優先することにしたのでした。

　幸い、人が多いところでもまだまだ栗はたくさんあって。
　たくさん集まった栗は、一部はカフェで茹でてもらい、一部は焼き栗にすることにしました。

「ゆで栗も焼き栗もおいしいわね」
　取った栗を堪能するだけでは飽き足らず。
「すみません、モンブラン２つと、ここからここまで全部１つずつください」
　メニューを指し示し、焼き栗や栗を使ったスイーツを片っ端から注文しました。
「えっ……？　かしこまりました」
　鎌倉の名家のお嬢様然とした清楚な美人の遠海の注文に、カフェの店員と半分ほどの入りだったお客は栗を取り落としそうになりました。
　さらにスイーツがやってくると、やせの大食いの生きた見本のような食べっぷりを周囲に披露。
　残念な光景ともいえましたが、大食いと言っても食い散らかすのではなく、食事マナーは完璧に守っているので不快感はなく、ゆっくりと美味しそうに食べているので周囲の食欲はさらに刺激されたようで。
「結構賑わってきたわね」
　そのせいかカフェはいつもよりもお客が集まってきたのでした。

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