桜台農園で、わくわく♪栗拾い｜リアクション

桜台農園で、わくわく♪栗拾い

　寝子高２年の愛猫萌々子はお付き合いしている３年生の万条幸次に誘われて、張り切って栗拾いの準備をしました。
「二重の軍手、上下ともにしっかりした生地のジャージ、頭を保護する帽子……」
　必要な装備を調べて、万全の準備をした結果。
「デートにはあまり相応しくない格好にはなってしまいましたけど……安全には代えられませんね」
　長靴も底がしっかりあって、栗のトゲぐらいならば通しません。

「先輩、おはようございます」
「おはよう、愛猫さん」
　一方、幸次はレンタルして必要最低限の服装でやって来ました。
（愛猫さん気合入ってるなー）
　ちょっと驚きつつ、しっかりしてるなと頼もしく思います。
「さあ先輩、お留守番の花遊さんにもぴりりちゃんにもお土産が出来るぐらいたくさん拾いましょう！　栗拾いは初めてですけど色々調べてきましたよ」
　幸次の飼い猫と、自身のルームメイトを気遣う萌々子に、幸次は顔をほころばせます。
「うん、僕も栗拾いは小学生の頃に家族で行ったきりだね」
　二人は栗の木が並んだ林を見回します。
「イガグリを地面に撒いて足止めトラップにするシーンって、アニメやマンガでたまに見るけど冗談抜きで踏んだら痛そうだよね。こんなのが上から降ってくると考えても……帽子被っておいてよかった」
　幸次はのんびりと話しながら、落ちている栗に近づきました。
「こうやって、イガを踏んで中の栗を火ばさみで取り出すと手に刺さらなくていいそうですよ」
　萌々子は厚底の長靴で栗を踏みつけましたが。
「虫食いとか中味が無いのもあるけど、栗の実を取り出してみないことにはわからないから……って愛猫さん、危ない！」
「……きゃっ！？」
　踏んだイガが滑って危うく転びかけた萌々子を、幸次は慌てて後ろから抱きかかえるようにして支えました。
「……先輩、支えてくれてありがとうございました。実際にやってみないとわからないですね」
「地面のイガグリに突っ込まなくて良かったよ」
　助けるときにちょっと身体に触ってしまい、幸次は内心ドキドキしていましたが。
（気にしてないっぽいからまあいっか）
（恥ずかしいところを見せてしまいました……先輩を巻き込んで倒れなくてよかったです）
　萌々子もドキドキを悟られないよう、冷静なふりをして幸次から離れました。

「形がきれいで、虫食いで穴が開いていないもの、皮が黒くなっていないものを選ぶんですよね」
　気を取り直して、栗拾い再開です。
　萌々子は同じ失敗をしないよう気をつけながら、調べてきたことを生かして栗を火ばさみで拾います。
　みるみるうちに、カゴはいっぱいになっていきました。
「二人だとたくさん拾えたね。ここのカフェで茹でてもらえるそうだから、持っていこう」
　幸次の提案に、少し考えて萌々子は答えます。
「たくさんありますから、半分を茹でて、もう半分を焼くように冷蔵庫で寝かせてみたいんですが、どうでしょう」
「そうだね、ここはモンブランがお勧めだそうだから、そっちも食べてみたいし」

　カフェへ入った二人は、さっそく店員さんに拾ってきた栗を半分渡しました。
「もちろん看板メニューのモンブランも食べないとですけど、先にシンプルな栗を堪能しましょう」
　向かい合わせに席に着いた二人は、栗が茹で上がるのを楽しみに待ちます。
「ところで花遊さんって栗お好きでしょうか？」
「大丈夫だと思うよ、栗には猫の体に悪い成分は入ってないし、しっかり茹でて食べすぎに気をつければ」
　そんなことを話しているうちに、店員さんが茹で栗を持ってきてくれました。
「「いただきます」」
　さっそく食べてみると。
「ん！　ホクホクしていて美味しい！　何個でも行ける気がします！」
「ほんとだ、おいしいね」
「誘ってくださって本当にありがとうございます」
　栗がおいしかったのはもちろんですが、何より萌々子の嬉しそうに食べている姿を見て、幸次はとても幸せな気分になりました。
（誘ってみてよかったなあ）
　
　その後食べたモンブランも、とても美味しくて。
　花遊にあげる茹でた栗をしっかりとり分け、焼き栗にするお土産も持って、二人は満足しながら帰途についたのでした。

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