降り注ぐ秋の味覚｜リアクション

降り注ぐ秋の味覚

◆作戦実行

　水守流は授業を終え、今まさに校門から出ようとしていた。そのとき、目の前に何かが降ってきた。

「うおっ！？」

　反射的に避けた先をみると、それは柿だった。
　なぜ柿が落ちてきたのか。その疑問を挟む暇も無く、次々に柿だけでなく他の果物も落ちてくる。

「まるで猿蟹合戦の蟹みたいな気分だな」

　そんなことを思いながら、彼は校舎の陰に隠れて様子を窺う。まさか下校しようとした矢先に果物の雨が降ってくるなんて予想できなかった。

「流石にこの雨はあぶねーっしょ。さーて、このまま雨が止むまで待つのが安全だろうけど……」

　流は落ちてきた果物をじっと見る。どれも艶があり、見るからに美味しそうだ。

「こんだけ美味そうな果物を食べないってのももったいねーよな」

　しかし果物の落ちてくる速度は尋常ではない。
　先ほどは避けることができたからよかったものの、直撃していたら怪我を負ったかもしれない。それに果物は地面に落ちた後、ある程度時間が経つと消えてしまう。

（つまり、なんとかナイスキャッチして消える前に食べればいいわけだ。どういうわけか、あんだけ速く落ちても砕けてないし）

　流は頭を回転させて、現状で出来そうな作戦を考える。そしてふと閃いた。

「お、そういや体育倉庫にネットがあるはずだよな？　あれを張って衝撃を和らげれば……！」

　彼はさっそくそれを行動に移した。体育倉庫からネットを拝借すると、片方を柱に固定して横向きに広げる。

「よーし、これで準備完了！　あとは……お、きたきた！」

　流の上空、雨粒のような果物たちが見えた。その位置や速度を考えながらネットを張ってみるが、だいぶ逸れてしまい残念ながらキャッチできなかった。

「あー、流石にそう簡単にはいかねえか。もうちょっと場所をずらして……今度はどうだ？」

　先ほどの落下位置や速度を踏まえて再度チャレンジ。自分に当たらないように気を付けながら今度は梨を１つ捉えた。

「よっし！　消える前にいただくぜ！」

　流はそれを手に取るとかじりついた。

「おお、この梨みずみずしくてうまい！　やっぱ秋の梨は最高だな！」

　ネットを使えばキャッチできることは確認できた。それならば他の果物も取って食べてみたくなる。

「なんとなくコツは分かった。さーて、この調子で今度は柿を狙ってみるぜー！」

　それから流は直撃に気を付けつつ、降り注ぐ果物を何個も受け止めた。狙った柿だけでなく、様々な味覚をこの雨が止むまで楽しんだ。

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