【星幽塔】第四階層　水面に映るのは｜リアクション

【星幽塔】第四階層　水面に映るのは

　ほしびとのリリエル・エーテライトは、盗人の光が宿ったメガネをつけて泉を訪れました。
「ここが二色木苺がなってる泉ですね！」
　籠を手に、あちこちに目を走らせます。
「今日は探し物が得意になるメガネをつけてきたから準備もばっちり！　Ｂａｒアストラルのお客様にふるまうためにいっぱい木苺集めますよー♪」
　とはいえなかなか実が見つからず、ちょっとメガネの効果が心配になってきた頃。
　不意にいっぱいの木苺が目に飛び込んできました。
「あ！　木苺見つけました！　いっぱいなってますね！　早速集めましょう♪」
　
　わくわくしながら木苺を摘んでいきます。
　籠に木苺をいれるにつれて、ぷうんといい匂いが漂ってきました。
「ふぅ、だいぶ籠がいっぱいになってきましたね。ちょっと休憩しましょうか」
　泉のふちに腰かけたリリエルは、汗をぬぐいながら美しい泉を眺めます。
「それにしても綺麗な泉ですねー。魚さんとか泳いでたりするんでしょうか？」
　そう言って泉を覗き込んでみると。

「あれ？　水の中に映ってる私の姿、何かおかしいような？」
　そこに映っているのは確かにリリエルで、服装も同じなのですが、本物のリリエルとポーズが違っています。
　舌なめずりをしながら木苺をつかんだ泉の中のリリエルは……
「……木苺をつまみぐいしていますね！」
　驚いて見つめていたリリエルですが、おいしそうに木苺を食べる自分の姿を見ていると、思ってもいなかった気持ちが湧き上がってくるのに気づきました。
「見ているとなんだか私もつまみぐいをしたく……はっ？！」
　つい傍らに置いた籠の中を見てしまって。
「いけません！　これはお客様にふるまう分……
　一旦は厳しく自分に言い聞かせたリリエルですが、もう一度、ちょっと物欲しそうに木苺を見つめます。
「で、でもこれだけいっぱいあるし……ちょっとだけなら……そう、もしまずいものをお客様に出してしまったら大変ですし。味見味見……」
　味見という大義名分を思いついて、リリエルは木苺に手を伸ばしました。
　もぐもぐ……
「んんんー！　この木苺すっごく美味しいです！」
　ごっくん、と飲み込んだ後、けれど口の中は急に寂しくなって。
「もう一つだけ……」
　知らぬ間に手が止まらなくなっていました。

「……はっ？！　つい食べ過ぎちゃいました！」
　かなり減ってしまった籠を見て、リリエルは呆然としました。
「だ、だまってればばれませんよね？」
　
　リリエルはその後、さっきよりも頑張って木苺を摘みました。
　そして無事Ｂａｒアストラルに二色木苺を持ち帰ることができたのでした。

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