シーサイド★ハンバーガーグランプリ｜リアクション

シーサイド★ハンバーガーグランプリ

●ハンバーガー日和

　楡宮遠海は「シーサイド★ハンバーガーグランプリ」の開催をSNSで偶然知った。
　王道のものから変わり種まで、様々なハンバーガーの画像が並んでいる。それを開催日の前日に見つけることができたのは幸運だった。

　翌日。
　彼女は朝から矢も楯もたまらず、猫の駆けるごとくまっしぐらに会場へ向かった。グランプリが行われているのは寝子ヶ浜海浜公園の特設会場。しかし彼女は規格外の方向音痴だったため、そこにたどり着くまでに数時間かかってしまった。

「やっとついた……」

　朝早くに出発したにもかかわらず、会場に辿り着いた時にはお昼時だった。だがここまで移動した分もあって、空腹が半端ではない。彼女の中から我慢も遠慮も消えていった。
　まずがガッツリとステーキバーガーから。極上赤身肉100%のパティは頬張っただけで分かるボリューム感。それでいて価格は抑えめで財布に優しい。次に４種のチーズバーガー、北海道ザンタレバーガーへと突入する。それぞれ異なる『こってり濃厚な味わい』を満喫すると、遠海は一息ついた。

「どれも美味しかった。なにか口直しがしたいな」

　ガッツリしたバーガーを３種類食べた後にも関わらず、彼女は迷わず次のバーガーを探し求める。そして見つけたフルーツバーガーとストレートティーで舌をリセットする。

「よし、ここから仕切りなおしていこう」

　それからしらすライスバーガー、寝子島鳥のチキンカツバーガー、タコライスバーガーとコマを進め、勢いを止めることなくウナギバーガー、ビッグニャック寝子島スペシャルを一気に攻略。

「……ふぅ」

　遠海はベンチに腰掛けて一息つく。これほど食べていると周囲の注目も自然と集まる。見た目は鎌倉の名家のお嬢様然とした清楚なたたずまいの美少女が、大量のバーガーを心底美味しそうにゆっくり味わう姿はどこか現実離れしている。けれどもその姿は下品ではないので不快な気持ちを与えない。もしかしたら彼女の食べる様子を見て同じものを買った人もいるかもしれない。

　そんな彼女がまだ手を出していないものがある。寝子島産の新品種唐辛子を使った激辛ソースをたっぷり使った、NEKO-JITAバーガーだ。
　大の大人も悶絶する辛さだが、それを越えたところにえもいわれぬ美味が待っていると噂される一品。覚悟を決めると彼女はそれを注文した。
　一口かみついた瞬間、口のなかで辛さが弾ける。

（これは……！）

　遠海は一瞬たじろぐ。体中から汗が噴き出すのを感じる。しかし強敵を前にしても退かず、汗みずくになりながら完食した。

「……おいしかった」

　彼女はえも言われぬ恍惚感に浸った。

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