ギャップ転生物語｜リアクション

ギャップ転生物語

　本条小萩は、はっとして目を開けた。そこは洋室であり、淡いピンク色の天蓋付きベッドが置かれていた。クロゼットや棚など、桜色で統一されており、まるで外国の裕福な家庭の女の子の部屋のようだ。
「わぁ……」
　転生をしてしまったことはすぐに理解した。
「もしかして、王女様に転生？」　　
　よく聞く転生先である。
　ワクワクしながら、自分の姿を見下ろして、小萩はぽかんとしてしまった。
　しっかりとしめられたネクタイ、ワイシャツ、ダブルのジャケット。姿見にはモノクルをつけ、緩くウェーブのかかった長い髪を束ねている自分が映っていた。
「し、執事さん？」
　見たことがある。貴族のお嬢様に使える使用人だ。
「なんで小萩が、執事なんですか！？」
　100歩譲ってもメイドの方が良い。
あたふたしていると、部屋のドアが開いた。
「あ、ここにいたの？」
「わ」
　入ってきた少女は綺麗なブロンドのロングヘア、驚きに見開いた青い瞳を瞬かせている。
　レース付きワンピースを纏うその姿はまるで人形のように整っている。
「はぁ、ダンスのレッスンで疲れてしまったわ。コハギ、昼食は部屋へ運んでくれる？」
「はい、お嬢様」
　小萩はとっさに口から出た言葉に驚くしかない。
(執事になっちゃうなんて……)
　戸惑いをよそに、執事としての小萩は廊下へと出た。
「なんか体が勝手に動くような気がします」
　厨房でお嬢様のことを伝え、カートに食事を乗せて部屋へと戻る。
「執事の小萩、テキパキし過ぎですね」
　自分でも信じられないほどよく動く。
「失礼します」
　カートを持って中へ。部屋に用意されたテーブルに料理を並べ、お嬢様が着席した。
「ありがと」
　飲み物を注いだり、ナプキンを渡したり、落としたフォークを代えたり。手取り足取りである。
「ふう、ごちそうさま。……」
　食器の片付けを初めると、お嬢様が、じっとこちらを見てくる。
「何か？」
「あーうん。コハギって格好良いわよね。なんでも出来るし、仕事早いし。わたしの婚約者なんてほら、隣国のヘタレ王子。あんな感じでしょ？」
「大丈夫ですよ。やる時はやる人でしょう」
「絶対ないと思う」
拗ねたようにそっぽを向く。
　どうやら今の小萩は仕事が出来る万能執事らしい。
「はぁ。シャワー浴びたいわ。着替えの準備してくれる？」
「かしこまりました。お嬢様」
　頭を下げ、部屋の外へ。廊下を歩いていると、メイドや他の執事から羨望の眼差しが。
「コハギさん、本当にスマートだよな」
「この前、さらりと助けてくれたんですよ。素敵……」
（うーん、天職なんでしょうか）
　もちろん、悪い気はしない。

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