氷がない！夏の動物園、けもの暑暑危機一髪！｜リアクション

氷がない！夏の動物園、けもの暑暑危機一髪！

　ねこったーを眺めていた寝子小５年の光村千恵は、動物園の書き込みを見て声を上げた。
「動物たちが大変！　なんとかしなきゃ」
　さっそく千恵は書き込みを拡散し、小学校のみんなに声をかける。
『氷を持って全員集合だよ！　ひとつひとつが大事なんだから』
『そんな大変なことになってたんだ？』
　同じ学年の桃井かんなが返事を返してくれた。
『うん、一緒に氷を渡しに行かない？　持ってこれる人は寝子小に氷を持ってきて、私クーラーボックス持っていくから』
『それじゃ、行くね』
　
　ねこったーを閉じると千恵はクーラーボックスを持ち出し、冷凍庫を確認する。
「あったあった」
　最近暑いので氷はたっぷり作ってある。
　全部クーラーボックスに移し、製氷皿には新しい水を入れた。

　しばらくして出かける支度をした千恵は、クーラーボックスを担いで寝子小の校庭に向かった。
　保冷バッグなどを持った何人かが校庭に集まっている。
　千恵を見つけたかんなが手を振った。
「持ってきたよ。氷をボックスにまとめちゃおう」
　急なことでさすがに全員では行けないので、代表として数人で動物園に向かうことになった。

　交代でクーラーボックスを持ち、バスに乗って。
　千恵たちはまたたび動物園にたどり着いた。
「あの、ねこったーを見て氷を持ってきたんですけど」
　受付のお姉さんに声をかけると、お姉さんは、にっこりして言った。
「ありがとう。あなた猫のTシャツ着てるわね。けもの月間だからチケット半額になるわ。氷のお礼に、お友達も半額でいいわよ」
「ほんとに？　ありがとうございます！　これ、少ないですけどぜひ役立ててください」
　クーラーボックスで運んできた家でつくった氷をお姉さんに渡し、クーラーボックスは帰る時に返してもらうことになった。
　
「……やるだけやったから大丈夫だよね。後は、動物園まわってみる？」
　千恵の言葉に皆頷く。
「あげた氷を白熊さんたちが喜んでくれるか気になるよね」
　氷を持っていくお姉さんと一緒に、まずは白熊のところに行ってみることにした。
　すると。

「ごめんよー！　助けて、助けてー！！」
　白熊コーナーに響く情けない悲鳴。
　飼育員の白野雪彦が母白熊グリフにゆさゆさ揺さぶられていた。
「わ！　でっかーーい！　仕切りがなかったら怖いね」
　その様子にちょっとびびる千恵たちだったが。
「でも子熊のほうは可愛くてのそのそ歩いてる」
（何だかちょっとお兄ちゃんみたい）
　別に兄の外見が熊に似ているというわけではないのだが、千恵はふとそんなことを思う。
（穏やかで大きいところとか）
「お、氷を持ってきてくれたのか？　助かる！」
　もう一人の飼育員熊山雄二が駆け寄って来て、お姉さんから氷を受け取った。
「ほらっ、氷だ！」
「がーう」
「きゅーぅ」　
　母熊と子熊のヒースが氷に飛びつく。
　氷にほおずりしたり、氷の上に体を横たえてみたり。
「た、助かった……ありがとう」　
　解放された白野がこちらへやってきて頭を下げる。
「よかったー！　喜んでもらえたね。せっかくだから写真撮ろうよ！」
「あっ、それじゃ俺撮るよ」
「お願いします」
　白野にスマホを渡し、みんなでグリフとヒースを背景に写真を撮ってもらった。
「よかった、うまく写ってる。ありがとうございます！」
　
　にぎやかにお礼を言った千恵たちは、ホワイトタイガーコーナーへ向かうのだった。

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