霊界遊園地で遊ぼう！｜リアクション

霊界遊園地で遊ぼう！

　木天蓼大学２年生の仙藤紫と、寝子高１年の仙藤蒼の姉妹が街を歩いていると、幼女に声をかけられました。
「いっしょにゆうえんちいこう！　むりょうだよ！」
「えっ？」
　そのあどけない幼女が宙に浮いていることに驚き、とっさに反応できない紫。
　しかし蒼は恐れることなく興味津々で問い返していました。
「無料？　どこの遊園地？」
　餅々きなこはにっこりして答えます。
「れいかいゆうえんちだよー、にんげん２めいさまごあんない～♪」
　気が付いたら、二人の周囲の景色は見たことのないものに変わっていました。
「にんげんといっしょだからはんがくだね♪」
「霊界遊園地……？」
　嬉しそうなきなこの横で、看板を読み上げ、途方に暮れる紫と、目を輝かせる蒼。
「人間の方はこちらへ。最近リニューアルしたばかりで、目玉施設が『人間屋敷』となっております。人間屋敷から無事出られたら自由に見て回ってください」
　

「人間屋敷って？　お化け屋敷じゃないの？」
　不思議に思いつつついていった二人ですが、中へ進むにつれ紫の顔は引き攣っていきました。
　昼のはずなのに園内は薄暗く、行き交う人々はふわふわと宙に浮かんでいたり、人ならぬ姿だったり。
「コ、コスプレよね……？」
「そ、そうだね多分」
　うわずる声を抑えつつ日本家屋にたどり着くと、おどろおどろしい音楽と共に冷気が漂ってきました。
「どうぞごゆっくり」
　ギイイイイイ。
　二人が入ると、神経に障りそうな音で軋む扉が閉まり。
　闇の中に、ふわふわと青白い光が浮かびました。
　ひたひたひた。
　クスクスクス。
　足音、子供の笑い声、誰もいないのに足元にろうそくが点り、その影が揺れて。
　そこは廊下のようでした。
「やっぱりお化け屋敷じゃないの……」
「お姉ちゃん、声震えてる？」
「だってここ、何か変よ……いやっ」
　足元を何か毛むくじゃらの物が撫でました。
　何もいないはずなのに行灯の影が、生き物ののように揺れて。
　ギャアアア！
　やがて口を開けた狐の姿になり、恐ろしい叫び声が上がりました。
「ひっ！」
　紫は、今まで体験したことのないような恐怖に襲われていました。
（あの冷静なお姉ちゃんがガチで怖がってる？）
　半分涙目になっている紫の顔に、蒼は驚愕しました。
　普段何かと蒼を子ども扱いしている紫が、蒼にしがみついてきました。
　そしてブルブル震えているではありませんか。
「お、お姉ちゃん？」
　気づけば足がガクガクして。
　蒼は、自分にも姉の恐怖が伝染してくるのを感じました。
「で、出よう！　先進もう！」　
　廊下の突き当りの扉を開け、部屋に足を踏み入れてみれば。
　天井からけたたましい笑い声が響き、鈴なりのあやかしたちがニヤニヤしながら姉妹を見下ろしているのでした――。
「「いやああああっ！」」　
　二人の絶叫が響き渡りました。

「ガチで怖かった……」
　半ば涙目になりながら、二人はどうにか人間屋敷を脱出しました。
「でも、これで免疫がついた気がするわ」
　紫が日頃の冷静さを取り戻した様子に、蒼も安心しました。
「しっかり心の準備ができたし、後は楽しもう！」

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